第4回 外国製品の描写は慎重に

応募訳文 その2

【21】
 「スパゲッティ…を…食べましょ…、ダメ、ダメ、ス・パ・ゲ・ッ・テ・ィ・よ…量は控えめにしてみたわ。どうしても食わず嫌いをするんだったら、食べなくてもいいのよ。」ママがファニーおばちゃんの「よく聴こえる耳」に向かって、大声で呼んでいる。ママがどうしてそんなにおばちゃんの耳がよく聴こえる時と聴こえない時があると思っているのか、不思議だ。両者のうち、あのババアの場合は耳が全く聴こえないことくらい、誰だって分かるのに。
 おばちゃんも、ママも、スパゲッティを食べたことはないが、考えてみれば、僕も食べたことがない。パパは、アーガクッカーで水を火にかけて、沸騰するのを待っている。ソースはもう温まっているが、まる30分前にソースパンから吹きこぼれてしまい、アーガクッカーの冷えたプレートの上に飛び散っていて、時折、まさにテレビゲームのような音を立てている。
 ようやく水が沸騰し、パパは、突然、パスタの束を取り出すのだが、パスタを包む色画用紙がまるで遥かに高いところに打ち上げられる花火にそっくりに見える。パパは、泡が沸き上がるお湯の中にパスタを入れる。

【22】
 「今から食べるのは…ええっと…スパゲッティ…よ。だから、スパゲッティ。味だけでもみてちょうだい。気に入らなかったら、食べなくてもいいから」母さんはファニーおばちゃんの「良い方の」耳に大声でまくしたてている。どうして片方の耳は聞こえていると思い込んでいるのか、さっぱりわけが分からない。おばちゃんの耳はどっちも全然聞こえなくなってるって、みんな知っているのに。
 ファニーおばちゃんも母さんも今までにスパゲッティを食べたことは一度もなかったし、考えてみれば、僕だってそうだった。父さんはコンロにかけたお湯が沸くのを待っている。ソースはとっくに温めてあって、たっぷり三十分前には缶から出してある。今はコンロの冷めたプレートの上に置いてあり、プツプツという音が時々聞こえてくる。
 ようやくのことでお湯がわくと、父さんは青い包装紙をがさごそ揺すって、すごく長い花火にそっくりのパスタの束を取り出して、沸騰しているお湯になかに立てかけた。

【23】
「さあ…スパゲティ…を…食べるわよ、ううん、スパゲティよ…一口食べてみて。口に合わなかったら、食べなくていいから」ママはファニー叔母さんの“達者な”耳に向かってわめきたてている。どうしてママが、いい人と厄介な人がいると考えているのかは全くの謎だ。老いぼればあさんは道端のポストと同じで、人に耳を貸さないというのは常識なのに。
 ファニーもママもそれまでスパゲティを食べたことはなかったし、僕自身も初めてだったと思う。パパはアーガのオーブンにかけた水が沸くのを待っていた。少なくとも30分前には缶から出され、アーガの冷たい鉄板の上に乗せられたソースはもう温まっていて、時折ポコポコいっていた。
 やっとお湯が沸くと、父が青い色紙からまるで長大な花火みたいなパスタの束を振り出し、煮立つお湯の中に麺を立てて入れた。

【24】
 「わたしたち……これから……スパゲティー、いえ、スパゲッティを……ちょっと食べるの。もしイヤなら食べなくていいわよ」と母さんは大声で、ファニーおばさんの〝よく〟聞こえる方の耳に言っている。一体なぜ母さんは、よく聞こえる方と聞こえない方があると思っているのだろう。ばあさんの耳が両方とも全く聞こえないのは、みんな知っているのに。
 ファニーも母さんもスパゲッティを食べたことがないし、そういえばぼくもまだない。父さんはアーガのコンロの水が沸くのを待っている。30分くらい前に缶から出したソースはすでに温められていて、アーガのかっこいいプレートの上に置かれ、ときおりクツクツと音を立てている。
 ようやく水が沸騰したら、父さんはまるですごく長い花火みたいな青い画用紙の袋からパスタの束を出して、お湯の中にまっすぐ立てて入れる。

【25】
 「さあ、スパゲティを……スパゲティを食べますよ! ためしに少し食べてみてください。口に合わないようだったら食べなくていいですから」ママはファニー叔母さんの「よく聞こえる」耳に向かって叫んでいる。まったくどうしてママはいいものと悪いものがあると思うのだろうか。謎だ。ばばあになると両耳とも全く聞こえなくなるってことくらい誰でも知っている。
 叔母さんもママもこれまでスパゲティを食べたことがない。そういえば僕もない。パパは禿げた頭でお湯が沸騰するのを待っている。ソースはすでに温まっており、たっぷり三十分前に缶詰から注がれて、パパの冷えた皿の上にのっている。特別なときの酒も置いてある。
 とうとうお湯が沸き、パパは青の色画用紙からパスタを取り出して紐をほどく。青の色画用紙は、とても長い花火のような世界を探している。パパは沸騰したお湯のなかでパスタを立たせる。

【26】
「スパゲティ……を……いただきましょう……いいえ、ス、パ、ゲッ、ティを、食べてみましょう。気、に、い、ら、な、かった、ら、無理しなくていいのよ」母さんがファニーおばさんの〝よく聞こえるほう〟の耳もとで大声をあげている。なぜ母さんが、おばさんの片方の耳はよく聞こえて、もう片方はよく聞こえないと思っているかは大いなる謎だ。年寄りはどっちの耳も遠いってことは、誰だって知ってることなんだから。
 ファニーおばさんも母さんもスパゲティを食べたことがない。そういうぼくも食べるのはこれが初めてだ。父さんはアーガオーブンにかけた水が沸騰するのを待っている。三十分以上前に缶詰から冷たい皿にあけられたソースは、ときどき、ピッとかヒューという音を出すアーガオーブンの上ですでに温まっている。
 ようやく水が沸騰すると、父さんが青い紙に包まれた細長い花火のようなスパゲティの束を縦向きにして、煮え立つお湯に振りいれる。

【27】
「いまからね、スパゲッティを、食べようね。違うちがう。ス・パ・ゲッ・ティ!ちょっと食べてみてよ。おいしくなかったら、やめればいいんだから」母はファニー伯母さんのいいほうの耳に向かって声をはりあげていた。どうして「いいほう」と「悪いほう」があるなんて母が思っていたのかは、まったくもって謎だ。あの婆さん、どっちの耳もぜんぜん聞こえてやしないって誰もが知ってるのに。
 ファニー伯母さんも母も、それまでスパゲッティなんて食べたことなかった。考えてみれば、俺もだった。父はアガ社のコンロにかけられた湯が沸騰するのを待っている。ソースはもうとっくに温まって、三十分以上もまえに鍋からアガのかっこいい皿に移し替えられている。たまのドリンク・パーティーで使うやつだ。
 とうとう湯が沸いた。父がおもむろに青い包み紙を振り、長くてきれいな花火みたいに見えるパスタの束を取り出すと、ぐつぐつ煮えたぎる湯の中につき立てた。

【28】
 「今日はスパゲッティ、……いえ、そうじゃなくて、ス・パ・ゲッ・ティ……を作るつもりなんです。少し食べてごらんなさいな。口にあわなければ、無理して食べなくてもいいですからね」ママはファニーおばさんの「いい」耳にむかって大声で話しかけている。ママはなぜ、この世にはいい耳と悪い耳があると思っているのだろう。謎だ。年をとっておばあさんになれば、どんな耳だってまったく聞こえなくなることくらい、誰だって知っている。
 ファニーおばさんもママもスパゲッティを食べたことがないし、考えてみれば、ぼくもそうだ。パパはコンロでお湯が沸くのを待ちかまえている。ソースはたっぷり三十分前には缶から注がれて、すっかり温められ、コンロのお皿の上でときおりポコポコ音をたてている。
 ようやくお湯が沸き、パパは青い紙に包まれたパスタの束(どうしても細長い花火の束に見える)を振り、沸騰したお湯のなかに入れた。

【29】最優秀訳文
「きょうはね、スパゲッティ、ですよ。いいえ、スパゲッティよ。ちょっとだけでも食べてみて。気に入らなかったら食べなくていいから」ママが大声でファニーおばさんの〈いいほうの〉耳にむかって怒鳴っている。どうしていいほうと悪いほうがあると思っているのかはまったくの謎だ。このバアさんが両耳とも聞こえなくなってることなんか、みんな知ってるのに。
 ファニーおばさんもママもこれまでスパゲッティなんてものを食べたことがなくて、でもそれをいったらぼくだって今日がはじめてだ。パパはコンロでお湯が沸くのを待っている。とっくに温まっていて三十分も前から鍋から吹きこぼれているソースは、保温プレートの上でときおりブクッと泡を出している。
 ようやくお湯が沸くと、パパはすごく長い花火にしか見えない青い紙袋からパスタのたばをざらざらと取りだして、ぐつぐつ煮立っている鍋に立てるようにして入れた。

【30】
「いいですか、これから、食べるのは、スパゲッティですよ。ちがいます、ス、パ、ゲ、ッ、テ、ィ。一口食べてみてください。お口に合わないようならね、食べなくても大丈夫ですからね。」母がファニーおばさんの「良い方」の耳に向かって叫んでいる。全くもって、耳には良い方と悪い方とがあるもの、と母が考えるのは何故なのか謎である。コウモリだって老いれば、両側がふさがった杭みたいに、両耳とも駄目になるのは言うまでもない。
 ファニーおばさんも母もスパゲッティを食べたことがなかったし、思えば私も食べたことはなかった。父はアーガ(コンロやレンジが付いた調理設備)の湯が沸くのを待っている。ソースはすでに温まっていた。ちょうど半刻前に缶から注ぎ出され、今は火を止めた方のコンロの上で、ぷつぷつと時折音を立てている。
 湯がようやく沸くと、父は青い厚紙のパッケージから細長いパスタを振り落とした。まるで、大きく開いた花火のようだ。沸騰する湯の中にパスタが入れられた。

【31】
 「スパゲティ…だったけ、そう、ス・パ・ゲ・ティってのを食べるの。いいから、ちょっとだけ食べてみて。おいしくなかったら無理して食べることないのよ」ファニーおばさんの「聞こえる」方の耳元で、ママは叫んでいる。おばさんの片方の耳は聞こえないけど、もう一方は聞こえるとママが信じているのは、まったくもって不思議だ。どちらも全く聞こえないのは、どう見ても明らかなのに。
 ファニーおばさんもママも、スパゲティなんて食べたことなかった。そしてもちろん、僕だって。パパは、アーガオーブンのお湯が沸くのを待っている。缶詰のソースは30分も前から温められ、アーガオーブンのクールプレートで待機している。ときおりピピッという音をたてながら。
 ようやくお湯が沸くとパパは、まるで花火みたいなブルーの紙に包まれたパスタの束を振り落とし、ボコボコと沸き上がるお湯に浸した。

【32】
「今から……いただく……料理はね……スパゲッティっていうんですって、いえ、スパゲッティです……少しでいいから、食べてみてください。残してもいいですから、お口に合わないようならね」ママはファニーおばちゃんの〝いいほうの〟耳に向かって声を張り上げている。どうしていいほうと悪いほうがあると思っているのかは謎だ。このよぼよぼのおばあちゃんの耳が両方とも聞こえないことはみんなが知っている。
 ファニーおばちゃんもママも、スパゲッティを食べるのは生まれて初めてで、考えてみると、ぼくも生まれて初めてだ。パパは〈アーガ〉にかけた水が沸騰するのを待っている。ソースはとっくに温まっていて、半時間あまり前にお鍋から移され、〈アーガ〉の冷たいプレートのうえで待ち受けながら、ときどき、ちかちかと光っている。
 いよいよお湯が沸き、パパは青い紙箱を振り、まるで大がかりな仕掛け花火のように、パスタの束を取り出すと、煮え立つお湯に投入する。

【33】
「今日・は・スパゲッティ・よ。そうじゃなくて、ス・パ・ゲッ・ティ。ひとくち食べてみてね。おいしくなかったら残していいから」と、母さんはファニーおばさんの「いい方」の耳にがなっている。こっちがいい方、あっちがよくない方と母さんが思っているのは、いったいなんでだろうな。あのオバチャンの耳はどっちも月ぐらい遠いなんて、みんな知っていることなのに。
 おばさんも母さんもスパゲッティを食べたことはないし、考えてみればぼくだってそうだ。父さんはといえば、アガのコンロでお湯がわくのを待っている。ソースはもう三〇分は前に缶から出して、とっくにあっためてあるから、今はアガの保温プレートの方でときどきフツッ、フツッと音をたてている。
 やっとお湯がわくと、父さんは青い紙の袋から、おおきくて長い花火そっくりのパスタの束を振りだして、ぐらぐらのお湯に立てて入れた。

【34】
 「さあ、私たちはスパゲティーだとか何とか世間では呼ばれているようなものを、いやいや正真正銘のスパゲティーを、ほんの少しだけ、ほんの少しだけ、これから試しに食くしてみたいとお、思います!もしも万が一好きじゃないのなら、食べる必要はないんですからね。」母は聞こえのいいファニーおばさんの耳に向かって叫んでいる。しかしながら、そもそも、なぜ母は自身の料理に味が良いとか悪いとかという次元の話が存在すると考えるのか、甚だ疑問である。例えるなら、年老いたコウモリはその置かれている立場故に、良くも悪くも他者の助言に耳を傾けようとしないことを誰もが知っているようなものである。
 母もファニーおばさんも今までにスパゲティーを食べたことはなく、スパゲティーに関して言えば、僕も食べたことはない。父はと言えば、水がアーガ製の調理器具で沸騰するのを待機している。そのスパゲティー用ソースは既に温められていて、満30分前にかんづめの缶から注がれ、アーガ製の調理器具の冷えたお皿の上に横たわり、時折、ポコポコという音を上げている。
 水が最終的に沸騰すると、僕の父はパスタ麺の一塊を、世界中が大きくて長い花火のように見える青色の色紙から取り出して、パスタ麺を揺さぶり、グツグツしている水の中に立たせる。

【35】
「さあ……スパゲッティ、じゃなくて、我が家初のスパゲッティ……を食べましょう、そう、ちょとだけね。でも、どうしてもいやなら食べなくてもいいのよ」 ママは、ファニーおばさんの 「よく聞こえる方の」 耳元に叫んだ。耳の片方が良く聞こえて、もう片方が聞こえないと考えているなんて全くもって不可解だ。周知のように、おばあさんの場合、両耳が聞こえないものだ。
 ファニーもママも、これまでにスパゲッティを食べたことが無いので、思いを馳せられないのだ。私もそうだ。パパは、大型コンロでお湯が沸くのを待っている。ソースは、既に温まり、30分以上も前に缶詰から注がれ、大型コンロ上の冷えた皿に盛られ、時折ピコピコと音をたてている。
 ようやくお湯が沸くと、パパは、ひも状のパスタを、まるで大きな長い花火のような青色の厚紙筒から振り落とし、沸騰するお湯の中に立てた。

【36】
「今からね……食べるのは……スパゲッティよ、ちがう、スパゲッティ(傍点/スパゲッティ)……ちょっと食べてみましょう。嫌だったら(傍点/嫌だったら)、無理して食べなくていいから」ママはファニーおばさんの“聞こえる方の”耳へ向けて大声で話しかけている。まったく、どうしてママはこっちの耳は聞こえてあっち側は聞こえないなんて思うのか、理解できない。このおばあちゃんはどっちの耳も全然聞こえないってことは、みんな知ってるのに。
 ファニーおばさんもママも、スパゲッティを食べるのは初めてだ。考えてみたら僕もそうだった。パパはアーガ(英国製レンジオーブン)にかけたお湯が沸くのを待っている。優に30分は前に缶から移したパスタ用ソースはもう温まっていて、時々プツプツと音を立てながら、温度の低くなったアーガのプレートに乗っかっている。
 やっとお湯が沸いたところへ、パパは、すごく細長い花火のように、青色のザラザラした紙袋からスパゲッティをどんどん振り出して、ブクブク沸きあがるお湯の中に立たせた。

【37】
「今から・・・スパゲティ・・・を食べるわよ、いや、スパゲティを少しね。食べたくないなら、食べなくてもいいのよ!」
 と、母がファニーおばさんの「聞こえる方の耳」に大声で言った。なぜ、母がおばさんには聞こえる方の耳と聞こえない方の耳があると思っていたのかは、大いなる謎だ。誰もが、年老いた偏屈なおばさんの両耳がまったく聞こえていない、ということを知っていたのに。

 ファニーおばさんも母も、スパゲティを食べたことがなかった。そして、僕も食べたことがなかった。父は、オーブンの上の水が沸くのを待っていた。ソースはすでに温められていて、30分前という理想的な時間に缶から出されて、オーブンの上の冷たいお皿の上に鎮座していた。時折ぷすぷすという音を立てながら。

 お湯がついに沸き、父は、誰の目にも大きな長い花火のように見える、青い紙に包まれたパスタを包みから取り出して、沸騰中のお湯の中に入れた。

【38】
 「みんなはね、これから、スパゲッティを、食べるの。そうじゃなくて、ス・パ・ゲッ・ティ。食べてみてごらんよ。好・き・じゃ・な・かっ・た・ら、食べなくていいから」
 母さんはファニーおばさんの「良いほうの」耳に向かって声を張り上げていた。どうして良いほうの耳と悪いほうの耳があるなんて母さんが考えたのかはナゾだ。ばあさんが両耳ともまったくのツンボだってことは、みんな知っていた。
 ファニーも母さんもスパゲッティを食べたことはなかったし、考えてみれば僕もそうだった。父さんはアガ(オーブンの一種。上部にある高温、低温二枚の調理皿で煮物や炒め物もできる)でお湯が沸くのを待っていた。ソースは半時間も前には缶から出されてもう温まり、アガの低温調理皿の上で時々グツグツいっていた。
 ようやくお湯が沸くと父さんはパスタの束を青い包装紙から取り出した。すごく長い花火みたいだった。父さんはお湯にそれを立てて入れた。

【39】
これから・・スパゲティ、いや、「スパゲティ」を食べるわよ・・試しにちょっと食べてみて。「イヤ」なら食べなくていいのよ。ママはアンティーファニーの「良く聞こえる」方の耳元で怒鳴った。まったく、何でママはよく聞こえる耳と聞こえにくい耳があるのを不思議に思うんだろう。イジワルばばあは両耳が全く聞こえないって、みんなが知っていることだ。
 ファニーもママもこれまでスパゲティを食べたことがなく、考えてみると僕もなかった。パパはアーガ社のオーブンでお湯が沸騰するのを待っていた。ソースはもうすでに温まっていてたっぷり30分前に鍋から移され、冷却プレートの上に放ったらかしになっていて、オーブンからたまに聞こえる「ピッピッ」という音がちょうど鳴っていた。
 ようやくお湯が沸き、パパが大きくて長い手持ち花火にそっくりな青い包み紙からパスタを出し、束ねているひもを振りほどいてブクブク泡立つお湯の中にパスタの麺を立てて入れた。

【40】
「スパゲッティ。。。あの“スパゲッティ”ですよ。少し食べてごらんなさい。万が一好きじゃなかったら無理しなくてもいいのよ。」と、ママはファニーおばさんの聞こえる方の耳に向かって叫んだ。どうして聞こえる方の耳と聞こえない方の耳があると思っているのか、とっても不思議だ。年を取ったこうもりの両耳は全く聞こえないっていうことは誰だって知っている。
 ファニーおばさんもママもスパゲッティを食べるのは初めてだ。そういえば僕も食べたことがない。パパは鍋の水が沸騰するのを待っている。ソースはもう温まっていた。少なくとも30分は前に缶から出されたソースは、コンロのかっこいい鉄板の上で時々音を立てていた。
 やっとお湯が沸いて、パパは青い包み紙を振ってパスタの束を取り出した。それはまるで長い花火みたいだった。それから、パスタをぐつぐついっているお湯の中に立てた。

【41】
「これからあたしたち……スパゲティをたべるのよ……噂のスパゲティ! ちょっとおためしにね。あ、好きじゃなかったら食べなくていいから!」ママはファニーおばさんの良いほうの耳に大声で言った。なんで良いほうの耳と悪いほうの耳があると思っているのか謎だ。どっちも昔っから聞こえないのはみんな知ってる。
 ファニーおばさんもママもスパゲティを食べたことがなかったし、考えてみたらぼくもはじめてだった。パパはお湯がわくのを待っている。スパゲティソースはもう温めてある。三十分も前に鍋から冷たい皿によそってあって、ときどきぽつぽついってる。
 ついにお湯がわくと、パパは青い色紙からパスタの束を取り出し、まさに華麗な長い花火のようなそれをぐつぐつ煮えたお湯のなかに立てた。

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