第77回 パーティでの司会業務でのふるまい

通訳ガイド行脚2014.03.16

通訳ガイドの業務は幅広く、時にはツアーのパーティで司会のアシスタントを務めることもあります。司会者の通訳や、エンターテイメント娯楽芸能の説明などをする訳ですが、アシスタントではなく司会そのものを仰せつかってしまうこともなりゆきであり得ます。何があっても“やるっきゃない”精神で臨むのですが、オフィシャルなパーティのスタイルも社会常識として知っておきたいものですね。

【パーティの進行】
・挨拶
・乾杯(鏡開きなど)
・食事
・エンターテイメント
・閉会(中締め)

パーティの進行はおおよそ以上の内容ですが、事前に主催者や司会者、ホテル側、エンターテイメントの出演者などと入念な打ち合わせをしておくことが大切です。

日本の風習は段取りも解説しよう
代表者からのご挨拶、招待客代表からの返礼のご挨拶の時、「通訳して下さい」と突然ふられてしまうと戸惑うので、通訳が必要な場面はどこなのか予め確認が必要です。事前にご挨拶の原稿をもらえることは少ないので、せめて企業の代表者やキーパーソンの名前、肩書(日本語と英語で)を正しく知っておきましょう。名前の読み方を間違えるのは致命的なミスとなるので要注意。

話し方(通訳のしかた)は安定したスピードで、固有名詞は絶対間違えず、文章も言い直しがないようにするのが仕上がりの印象をアップします。会場がざわついた雰囲気でも、淡々とBGMのような感じで進めましょう。

鏡割用に酒樽が用意されたりする時には、なぜ酒樽の蓋を木槌で割るのか?という日本の風習の意味を説明するのも通訳ガイドの役目です。タイミング良くコンパクトに、誰がどの位置に立って、掛け声に合わせて木槌を振り降ろし、その後は枡酒を飲む…という段取りも同時に説明せねばなりません。
パーティの流れをスムーズに運ばせるためには、鏡割りに参加する方には事前に段取りをご説明しておけると良いですね。

「鏡」は円満を、「開く」は末広がりを意味し、正月に備えた鏡餅を食べる「鏡開き」は昔、武家の新年の仕事・行事初めに行われた儀式の一つでした。現在でも、一年の健康と発展を祝った『鏡開き』が受け継がれています。また、昔から日本酒は神事を営む際に神酒として供えられ、祈願が済むと参列者でお酒を酌み交わし、祈願の成就を願うことが習慣となっていました。酒屋では、酒樽のフタのことを鏡と呼んでおり、神事での酒樽のフタを開く「鏡開き」は、新たな出発や区切りに際し、健康や幸福などを祈願しその成就を願うものです。

エンターテイメントとして和太鼓や、日本舞踊などが予定されていれば曲名や歌の意味、背景なども適宜加えてご紹介します。

乾杯は代表者や年長者に!
さて、注意したいのは乾杯です。慣れた司会者がおらず、和気藹々な気軽な雰囲気が出て通訳ガイドがリーダーシップをとる時などが落とし穴です。乾杯の音頭は通常、代表者やそれに準じた年長者などが行います。ある時ベテランの通訳案内士のAさんは、「いざ乾杯の音頭!」という時に周囲を見回すとたまたま近くに誰もいなくて、参加者はみんなAさんを注目しているムード高まった状況となったので、グラス片手に思わず自分で、“Bottoms up, Kan-pai!”とやってしまいました。クレームは出るわ赤恥をかいてしまったと、今では笑話です。通訳ガイドでなくても、企業の若手社員でも同じようなミスをしてしまうことはあるようです。社長が数メートル先にいるのにもかかわらず、興に乗った進行担当社員が自分で「乾杯!」とやってしまい失笑を買う…。

通訳ガイドは何でも知っていなければいけないのですが、観光情報だけでなく、こんなプロトコル知識も必要なのですね。