第82回 “話し方”も通訳ガイドの技量のうち

通訳ガイド行脚2014.08.16

通訳ガイドがスローシーズンの夏は、勉強&スキルアップの季節です。“特定の観光コースを徹底的に研究して情報を出し合い、参加者全員でスキルアップを狙いましょう”という育成プログラムが開催されました。今回選ばれたのは人気の冨士・箱根コースです。

窓から見える景色や観光地を数字を含めて紹介する情報、日本人でも「ふ~ん、そうなのか」というトリビア、ちょっぴり専門的な事象のわかりやすい解説、目に見えるものから発展するジェネラルトピックスなども勉強課題に含めて、毎回充実感に溢れる通訳案内士達の勉強会が続きました。

育成プログラムの最終回は、成果を発表する審査会です。ビジュアルツールを使う工夫をしたり、準備や練習を積み重ねた実力が130%発揮できた人が6割、緊張のため途中で頭が真っ白になってしまい、実力の60~70%しか発揮できなかったと思われる人が3割です。

さまざまなタイプの通訳ガイドがいる中で「あ~、もったいない!」と感じる場面があったのでご紹介し、参考にしていただければと思います。

Aさんは社会経験も豊富で意欲満々、博学で勉強熱心でガイドとしての知識やリーダーシップを十分持っています。素敵なガイドさんになれそうな外観と雰囲気。ガイドトークも気合が入って滑り出し絶好調、聞く側も最初は聞き耳を立てています。

しかし途中から、モソモソと何を言っているのか曖昧でわかりづらくなりました。「きっとこういうことを言っているんだな」と想像を働かせなければ聞き手の頭に話が滑り込んで来なくなりました。練習不足の内容をガイドすることになった為でしょうか。聞いていて疲れる、ストレスが溜まる=ガイド力の評価が低くなるというパターンです。

聞きづらい英語トークを分析してみると、話し方のスピード、そして声の音量が不安定すぎるのでした。考えてみるとAさんは、日頃の日本語での会話も明瞭に聞こえない話し方であったかもしれません(話し方の癖は、どんな言語でも共通なので、日本語を聞けば外国語での話しぶりも想像できるのです)。日常的な会話調の話し方は、多数の人に長時間に渡って聞かせるためのトークに変貌させて商品にしあげましょう。

長時間聞いていて、分かりやすく聞きやすいトークとは――
・文章の頭から最後のピリオドまで、言い直しをしないで一気に言いきる。 
・文章は短くても良い。短い文章を重ねてゆく表現でもOK。
・「アー」「ウー」など余分な間次ぎの音を入れない。
・ 声の大きさと話すスピードを一定に保つ
・語りかけるような雰囲気を感じさせる。

これは、大勢の前で発表をする時や、一般通訳の際にも同じことが当てはまります。
(例)
  1     2    3 
(そうでは)(ないと)(思います)

この1文を、同じ長さの3拍で言うと、よく普段耳にする自然な会話となります。
しかし、(思います)の部分は声も小さくなり、縮小され、コチョコチョとした感じになるのではないでしょうか? もし日本語を習いたての外国人だったら聞き取り辛く、小さな緊張が走るでしょう。日本人同士なら、たとえ(思います)が聞こえなくても容易に話しの流れが想像できるので問題ないわけです。

大勢を前にしたわかりやすいガイドトークにするためには、
(そうでは)(ないと)(思い)(ます)
という4拍ぐらいの気持ちで話して、安定感を出すことがコツです。

情報量も大切ですが、それより前に基本的な話し方ができているかどうか? これが通訳ガイドの技量イメージを左右する大切な要素だと実感させられる勉強会でした。

逆に、話し方にプレゼン力があると情報量が少なめでも全体の印象はグンと良くなります。
日頃からテレビニュースのアナウンサーがどのような話し方をしているのかを意識して、明瞭な話し方ができるように心がけてみたいものですね。