第84回 殺陣の人気が上昇中

通訳ガイド行脚2014.10.16

殺陣が体験型日本文化紹介の一環として外国人観光客に人気が出てきています。忍者ショーの延長線ですね。今後、増加する外国人向けプログラムに対応すべく、テレビや映画で活躍する俳優さんたちが所属する殺陣の道場で行われる体験研修を見学しました。

殺陣というと、時代劇などでお馴染みのいわゆるチャンバラ劇を想像しますが、本来、剣道や居合などの武術とはどう違うの? という素朴な疑問がありました。
「殺陣は、武術を習得したうえで極めて行く芸能です」
という説明にあらためて、「ああ、芸なんだ!」とすっきり納得がいきました。単に battle show という響きに留まらない闘いの formation という芸術性、そしてさらには工芸品としての日本刀のことや武士道、武士の精神についても外国人観光客にも伝えたいものですね。

まず、参加者は整列して床に座り、先生と神棚に向かって礼をして始まります。袴の下に締めた帯に刀をさすので、これを帯刀と呼ぶのです。まずは鞘や刀の向き、扱い方の説明を受けます。刀はそって湾曲していますがこれは大円の外周部分とも言えます。真剣ではない fake sword は、樫の薄い木刀に銀箔がかぶせてあるのです。漆塗りの鞘(case)も大切な工芸品。だから馬に乗るときは左側から乗るので鞘が馬体に当たらぬよう、また道行くとき逆方向から歩いて来る人の鞘と鞘が触れ合わないように体の左側に刀をさします。

帯刀→抜刀→構え→納刀が最初の基本動作です。
刀を抜くときには左手を鞘の鯉口(鯉の口のような形をしているからその名がついた)に添えて、右手で刀を思い切り右側に引いて抜きます。刀は腕よりも長いので、両手で引き延ばすようにしないと抜けません。抜いたら左足を引いてまずは上に刀を振り上げます。

以外と難しいのは抜いた刀を鞘に戻すアクションです。まずは血振り、刀をしっかり上下に振り落として刀についた血を振り払います。そして鞘を左手で前に持って来て角度を外側に倒します。左手の親指と人差し指を広げてその間に刀の背をあてて右へスライドさせ、口に合わせて納刀。ササーッと流れるような美しい動作に見えるようにするのは容易ではありません。が、緊張した中で、先生にちょっと褒められたりするととても嬉しい気分になって、やる気が出てきます。

構え方には、正面に構える「正眼」「上段の構え」「脇構え(斜め後方下向きの構え)」などがあります。

切り方も多種ありますが、基本の3つだけでも十分にかっこいい。上から下へ竹をスパッと切り割るように真っ直ぐに振り下ろすのを唐竹(からたけ)と呼びます。そして右方向、左方向、真横に(horizontally) 切る方法を胴、そして相手の左肩から斜めに右脇腹に向けて切り下すのを袈裟切りまたは逆袈裟などと呼びます。僧侶が着る袈裟の角度ですね。この斜めの切り方の時は、具体的に時計の文字盤を参考にして「10時から4時の方向に」などの表現をするとわかりやすくなるな、と通訳ガイドは思う訳です。

「構えて切る、構えて切る、構えて切る、血振りをして納刀」
この基本の動作を何度か練習してスムーズにできるようになったら、今度は相手に触れずに安全に、かつリアルに見せる演技力を加えます。

相手を睨み付けるような真剣な眼差し、重い真剣を持っているかのように重みを感じさせる演技力は重要なポイントです。足さばきも緊張を感じさせるようにしながら、大きな「エイヤーッ!」の声が出て、動きに勢いがついてくると突然、生き生きと臨場感溢れる場面が生まれるのでビックリ。

体験では、先生のほかにいわゆる切られ役の「相手方」を務めてくれるスタッフが何名か一緒に演じてくれます。相手方の演技が上手だと、立て続けに3人ぐらいが次々とバッタバッタと切られて倒れる様が見ていてもかっこ良く気持ち良いので、実演する方は実に爽快気分だろうと思います。切るアクションに合わせて切られてリアルに倒れるタイミングがポイントで、訓練が必要。(切られ役がプロだったら、ちょっと練習すれば新人の俳優さんでも名剣士が演じられるのかも?笑)

数名を切るのはほんの10秒間位のことですが、各種の型やパターンを組み合わせて一連の殺陣ストーリーが演じられるようになると、日頃のストレスもすっ飛びそう。これが人気の秘密なんだと思いました。世界中から殺陣マニアが訪れるそうです。

外国人に進行を説明する時には、先生の日本語での説明のあと間をおかずすぐにスラスラと、日本文化の詳細補足説明も加えながら通訳ガイディングを行い、スピード感が失われないように溶け込ませるのがコツです。必ず下見をして予め理解をした上でガイド現場に臨みたい日本文化体験の一つですね。