第86回 バス内で立てないガイドの苦労

通訳ガイド行脚2014.12.16

「道路交通法」によれば、立席のある路線バスを除く観光バスでも乗客やガイドさんにシートベルトの着用が求められています。

All passengers are supposed to fasten seat belts while on board.
これは、バスの中でマイクを持って案内をする通訳ガイドにとっては実はなかなか厳しい法律なのです。なぜかというと、ガイドは外国人のお客様の表情や反応を見て、興味のありそうな話題は深く説明し、興味を示さない話題はサラリとやり過ごす…など、あくまでお客様本位に考えてお客様の満足度を高めようとする本能があるからです。

それが、シートベルトをするために着席してガイドをするとなると、お客様の様子が確認できないまま前方の風景を見て一方的にトークをすることになります。目指すべき双方向のコミュニケーションではなく一方通行のコミュニケーションになりがちなのでテンションが下がり、どうもうまくガイドトークができないという人も多いのです。下手をしたら、
「ガイドなんていらない、録音したガイドテープを流しておけばよい」
というようなことにもなりかねません。

そこで通訳ガイドさん達も知恵を絞ります。下半身はシートベルトに収まって前を向き、上半身は後ろにひねって後ろ向きになって少しでもお客様の顔を見て話したりしているガイドが多いです。でも、それって腸捻転にでもなりそうに苦しいのです。腰痛の原因にもなりかねません。

しかし、安全は確保せねばならず、実際急ブレーキで頭からフロントガラスに
突っ込んでしまったケースもあるようですから、まして違法行為となると無視できません。通訳ガイド本人のみならず、バスの運転士やバス会社にとっても一大事です。「ガイドさん、立たないで下さい」と繰り返すドライバーもいれば、あまり気にしない人もいるようです。会社の指導も一貫していないのでしょうか。
「バス内で私の得意な剣道の胴着を着て見せて好評でした。Samurai Girl Guideとして竹刀も皆さんに見てもらって喜んでもらえたんですよ」
というガイドさんは、ある日運転士から怒鳴りつけられました。
「何かあったら運転士の僕が解雇されてしまいますからやめて下さい」
そこで次の業務の時には、道が平坦でスピードも出ずに安定した場所に来た時に、少し立って説明するようにしたそうです。また運転士の意思を尊重してお伺いを立ててその反応でに応じて立つ、、、などその場の状況に委ねられていたところ、
「いちいち聞かずに、そんなの勝手にやって」
と逆に言われてしまった(笑)というあれやこれやの苦労話も聞きます。

実は良い解決策があります。旅客機の客室乗務員のように何とか後ろ向きに座れるガイド用の椅子を観光バスは設置してくれないかしら?と思うことしきりです。現段階では難しいようですが…。

少しでも合法的に、良いサービスが提供できるようにできないだろうか!
地図やビジュアルのサブツールを見せたりする時に役立つ、洗濯バサミとゴム紐、クリップ止めを利用した小道具を考えだすなど、通訳ガイドにとっては知恵を絞って考えて試行錯誤、四苦八苦の日々が続いています。