第2回 小説の翻訳は形から入る

文芸翻訳コンテスト2016.05.15

第2回の課題文はこの作品

The Language of Cats

The Hidden Ballroom at Versailles
from The Language of Cats
Spencer Holst 著

次回の課題文は、これだけで完結した短い小説です。作者のスペンサー・ホルスト(Spencer Holst, 1926-2001)は、もともとは storyteller(お話の語り手)と呼ばれる職業の人で、1960年代からニューヨークの教会に人を集めて自作のお話を語って聞かせていました。それが評判になり、活字にして残しましょう、ということで、何冊かの本が出ています。

ジャンル分けすれば、童話や、寓話、幻想文学に属する話ばかりですが、何しろヒッピーのドラッグ文化をくぐり抜けてきた人なので、一筋縄ではいきません。ブラックユーモアというか、かなりの毒を含む物語があるかと思えば、美しいイメージが広がる詩的な寓話もあります。この課題文は、その美しいほうのお話です。

出典は、大手出版社から出たスペンサー・ホルストの最初の本、The Language of Cats(1971年)です。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、YouTube を覗くと、いろいろな作品をスペイン語に訳して朗読している動画がけっこう見つかります。

繰り返しますが、これだけで完結したお話です。作者の言葉の並べ方に注目しながら訳してみてください。

課題文

The Hidden Ballroom at Versailles

by Spencer Holst

 Elegant and opulent, yet undiscovered, “the hidden ballroom” at Versailles whose entire floor is made with many fragile panes into a smooth, single surface of mirror, rests undusty in darkness, unentered for two centuries by a flicker, nary a moonbeam nor match, lamp, nor any light, except for one time. Then, a tiny batch of insect eggs (blown through a crevice down through an imperfection in the molding onto the great glass floor) hatched fireflies.
 That was in 1893.

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