第1回 ガイド中に遭遇する「えっ、そのチョイス!?」

日本お土産珍百景2016.04.05

日本にいながら世界中を旅する職業

ある日、スウェーデンから来た3人と、浅草にて。
「プレゼント用に包んで下さい。それとお渡し用の小分け袋も3枚お願いします」
ふと横を見ると、3人が口を揃えて「これを探してたのよ~」
よかった、よかった。通訳案内士という仕事の醍醐味を覚える瞬間のひとつです。

photo_omiyage_01……という訳で、私、いわゆる通訳ガイドとして、日本へいらっしゃる外国人のお客様を今日はあちら、明日はこちらへ日々ご案内中。具体的にどんなことをしているかといいますと、個人グループならば、旅の立案・行く先々でのご案内・お食事の提案。企業視察でいらっしゃる場合はこれらに各訪問先でのミーティング通訳なども加わります。あるときは、外国人のお客様は礼儀正しいことこの上なく、日本に来たのだから郷に入っては郷に従えとばかり、まず日本語で肩書きの発音練習。「シャチョー、ブチョー、カァカァリィチョー」と私も一緒に練習し、全員で人間スピードラーニングマシンと化したときもありました。その後は、旅館で日本古来の飲みニケーションとは何ぞや? を体感していただくため、歌に宴会にと実演に励み、通訳案内士試験には絶対出題されない実技問題と格闘することも。

はたまた、長いツアーで風邪を引いてしまったり、運悪くお怪我をされた方を病院にお連れすることもあり、そんなときは医療通訳に早変わり。もともとの職業である薬剤師の知識を記憶の永久凍土から掘り起し、通院のお手伝いをすることも。日本到着から離日のときまでまったく気を抜くことはできないけれど、日本にいながらにして世界中から来る皆さんから多くを学ぶことができて、まったくありがたいかぎりです。私の祖父は「旅無くして人生に非ず」と口癖にように言っていたのですが、強烈な優性遺伝で私にも発現しているようです。

想定外の外国人視点にびっくり

この自称天職=通訳ガイド業を通じて学ぶことのひとつに“日本人と外国人の視点の違い”があります。通訳ガイドは「外国人のお客様に正しく日本を紹介し、なおかつ楽しんでいただくこと」が大前提なので、最初のうちはご案内する先々で、お食事のメニューやお土産を選ぶといったシーンでは基本的にはスタンダード度100%の選択します(初めての来日の方などには特にそうする傾向が)。しかし、残念ながらお客様のお好みに合わなかったという場合や、「それ、選ぶんですか!?」とこちらがまったく予想だにしなかったケースがあったりと、私の固定観念が良い意味で木端微塵になることもしばしば。目からウロコどころか角膜まで剝がれ落ちそうな衝撃を受けることもあり、世界は広い、そして私の視野はまだまだ狭いと反省を繰り返す日々なのです。

それが顕著に見られる場面がお土産を選ぶときです。私たちは日本人であるがゆえに、子どもの頃から、“これはこういうときに使う”といった刷り込みをされています。それはその国でその用途のために開発されたのだから当然のこと。一方、外国人は初めて日本の地を踏んでそれを手にし、「これはなんだろうか?」とシゲシゲと眺める。そのときの発想はとてつもなく自由です。

絵を飾るために仏壇買っちゃう!?

例えば、とあるフィンランド人観光客ご一行と東京観光のド定番・浅草に行った帰り道のこと。さ~て、次はお待ちかねのマイ包丁を買いに合羽橋に向けて出発だ~、と意気揚々と歩き出したのはいいけれど、たった2分で沿道のお店に引っかかってしまいました。おひとりがちょっと離れた所から私を呼んでいます。「ミサオ~、これ買いたいんだけど~。ちょっと来てくれないか~」

photo_omiyage_02一団をぐいぐい先導していた私が飛んで戻った先は、なんと仏壇屋。彼の指が指し示す先にあったモノは、いらっしゃいませ! と言いたげに扉全開の仏壇でした。それもかなり大きめの……。慌てて、これは仏教徒が自宅でご先祖様を供養するために備え付けるものですからね、とあきらめていただくために正しいトリセツを差し上げたのに、あきらめるどころか増々買う気倍増。まぁ、それじゃどのように使うつもりか教えてくださいよ、と問うたところ、
「中に絵を飾るんだよ」
驚愕の回答です。あまりの意外さに私の左の口角は30度も下がってしまいました。そんな私の表情など目もくれず、「ほら、見たいときには扉を開ければいいし、ちょっと飽きたら閉められるし、便利だと思わないか? 何よりもハウス(ハウスって!?)自体が美術品じゃないか!」と、キラキラとした瞳で追い打ちをかけるように力説されてしまいました。それからしばし、このデコレーションは派手すぎる、いやドアは二重がいいんだよね(戸締りじゃないですよ?)などと議論をした後、結局大満足の逸品をお買い上げということに相成りました。しかもお持ち帰りで!

こんな調子で外国人ゲストと接する中、日本に住んでいる日本人はわからない、というか私たちには思いもつかないお土産選びにまつわる珍事や、「それもありか!」と意外にも外国人に喜ばれるお土産のエピソードなどを、このコラムでは徒然とご紹介したいと思います。