第13回 1周年記念に句読法を確認

一行翻訳コンテスト2008.05.16

■オススメの一冊
お手頃パンクチュエーション本

『Punctuation Plain & Simple』
(Edgar C. Alward & Jean A. Alward著、Barnes and noble 刊)

Punctuation Plain & Simple

日本の英語教育というのは、かつては文法重視だったわけですが、その時代でもパンクチュエーション=句読法についてはきちんと教えていなかったと思います。少なくとも僕は習いませんでした。さすがにピリオドとカンマについては間違える人は少ないでしょうが、コロンやセミコロンあたりになってくると危なっかしい人も少なくないと思います。大学生になったら誰でも読まなければいけないと言われる基本的なペーパーバックとしてWilliam Strunk Jr.とE. B. Whiteの『The Elements of Style』がありますが、とても薄い本なので、いささか不十分なきらいはあります。括弧から引用や脚注なども含めて、すべてを網羅してという意味では『The Chicago Manual of Style』がありますが、こちらは分厚くてなかなか全部読み通すのは容易ではありません。そこで、今回ご紹介するのは、ほとほどの厚さでお手頃価格のパンクチュエーション本、その名も『Punctuation Plain & Simple』。
パンクチュエーション、特にセミコロンの使い方については間違って覚えている人が多いです。(別の言い方をすると接続副詞の使い方をきちんと覚えていない。)二つの考えをand/but/or/nor/for/so/yet/while/whereas以外でつなぐ場合、あるいは二つの考えを接続副詞でつなぐ場合にはセミコロンが活躍します。(他にも用法はありますが。)接続副詞というのはhoweverとかthusとかthereforeとかいろいろあるんですが、接続詞ではないので、文と文をつなぐことはできません。たとえば×They considered the device ideal for the purpose, however, I thought it still could be improved.
○They considered the device ideal for the purpose; however, I thought it still could be improved.
○They considered the device ideal for the purpose. However, I thought it still could be improved.またbut=howeverではないと覚えておいた方が良いと思います。(ここではこれ以上突っ込みませんが。)この手の知識はやはりきちんと整理しておくべきで、この本の場合、Ruleとして項目別に見やすく整理されているほか、練習問題なども含まれているのも良いと思います。ちなみに、日本語では『英語の句読法辞典』(稲森洋輔、インターワーク出版)というのも出ています。

■今月のペーパーバック
本物の霊媒師が書くゴーストハンティング物語
『Demons Are a Ghoul’s Best Friend』
(Victoria Laurie著、Signet刊)

Demons Are a Ghoul's Best Friend

では今月のエンターテインメント。この間のハワイでこれまた手に入れた本です。Victoria Laurieは、本人が霊媒だという変わった作家で、既にThe Psychic Eye Mysteriesシリーズを数冊上梓していますが、その彼女による新シリーズがA Ghost Hunter Mysteryというシリーズ。今回ご紹介するのは『Demons Are a Ghoul’s Best Friend』。本作は『What’s a Ghoul to Do?』に続くシリーズ第2作です。サイキックのM. J. Hollidayは、パートナーのGilley、それにSteven Sable博士と共にいわゆる「ゴーストバスター」事務所を構えています。本作でM. J.は、彼女の友人であるKarenから、彼女の姪が心霊体験をした、それも手斧を持った亡霊に殺されそうになったと告げられます。3人は、Karenと共にこの亡霊、Hatchet Jackを地獄へ送り返すためにニューヨークへと向かいます。でも学生部長は非協力的な上に、M.J.を誘惑する博士まで登場。さて彼女たちは使命を達成することができるのでしょうか? ストーリーはこのような感じですが、本物の霊媒が書いているので、除霊シーンやテクニックなどはなかなかリアルです。またテイスト自体はコジー系なので、随所にユーモラスなシーンも登場し、すいすいと読み進めることができるでしょう。この作品中で、楽しいのが、英語があまりうまくないSteveとM. J.の会話。Karen gave him a smile. “Perfect. I’ll book two rooms with double beds. If we leave around five we can be there by eleven. I hope traveling that far isn’t going to be a problem?”
“It’s no problem,” said Steven. “We can break into the new van.”
“Break in the new van,” I corrected gently.
“What is this difference?” he asked.
“If we did it your way, we’d get arrested.”という感じ。これ、訳すのはけっこう大変です。(だから今月の課題。)ちなみに登場するオウムのDocは著者が飼っているオウムがモデルのようです。では今月のコメントを。

■第12回 ウルトラショート翻訳課題の講評
<課題文>
The residents of Lumby, though, decided that it might be interesting to be out of sync with the rest of the country for just one year, so for the next twelve months, followed the written word to the letter.

<解説>
まずLumbyの発音ですが、ランビー、ランビィ両方とも可とします。decideは判断くらい。out of sync(h) withは、「合っていない」という意味の口語表現です。to the letterも熟語で、「文字通り」とか「厳密に」という意味です。このあたりの表現をきちんと押さえた上で、訳文を考えると良いでしょう。文章の流れとしては、まずThe residents…decided that…for one yearが一かたまりで、so for the next twelve months以下はsoでつなげられた2番目の文章ということになります。next twelve monthsはone yearという表現を使っているので、言い換えて同語反復を避けています。「でもランビーの住人は、一年だけ、国内の他の場所と違ってみるのも面白いと考え、それから十二カ月の間、文字通りカレンダーに従ったのである」とか「でもランビーの市民は、一年に限って、自分たちだけよそとは違ってみるのも良いと考え、カレンダーにそのまま従った。」など。ではコメントです。

1.

ところが、ランビーの住民は一年だけ町外と同調しないのも面白いかもしれないと決断し、次の12ヶ月間、厳密にそのカレンダーに従ったのである。
(*全体には良く訳されているのですが、決断が浮いています。「きっぱりと決めること」なので、mightとは合わないかな。)

2.

ところが、ランビーの住人たちは1年くらい世間と歩調を合わせないのも悪くないと考え、その年はカレンダーに記された祝祭日にそのまま従ったのであった。
(*世間という訳語選択はとても良いと思うのですが、「合わせないのも悪くない」が否定の連続になってしまったのが惜しいかなあ。)

3.

しかしランビィの町の住人らは、1年ぐらいほかの町と休日がずれているのも面白いだろうと思い、この12ヶ月間はそのカレンダーどおりに過ごすことにした。
(*休日というのはもちろん「国民の祝日」という意味もありますが、「休みの日」というのが先に浮かぶと思うので、ここでは「祝祭日」とか)

4.

しかしランビーの住民は、この国中で自分たちだけがほんの一年の間、世の中と違う日を祝日として過ごすのもおもしろいのではないかと考え、それからの12ヶ月、そのカレンダーどおりに生活したのだった。
(*声に出して読んでもらうと分かるんですが、間違ってはいないんですけど、すっと頭に入ってこないんですよ。もう少しブラッシュアップすると良いでしょう。具体的には「この国中~おもしろいのではないか」の部分)

5.

が、ランビーの住人たちは一年くらいなら余所とずれているのもおもしろいかもしれないと思ったので、それから12ヶ月間はそのカレンダーに忠実に従ったのだった
(*「が、」は文章で接続に使うのはちょっとわかりにくいです。それ以外は前半は良い感じですが、後半はもう少し流れが良くできそう。「それから12カ月の間、そのカレンダー~」とか。)

6.

しかしランビーの住人は、たった1年、これからの12ヶ月だけならここ以外のこの国と違うことをするのは面白いと思い、文字通りに書かれていることを忠実に守ることに決めた。
(*「こ~こ~こ」という「こ」の三連発は読みにくいです。「たった」よりは「一年限り」みたいな訳語の方がよさそう。「違うことをしてみるのも面白い」くらい。あと、決めたんじゃなくて、決めて、その通りにしたんですね。)

7.

しかしながら、ランビーの住民らは、1年だけであれば、国の他の地域の住人らとは一風ずれた暦を過ごすのも悪くないと思ったので、それからの12ヶ月間は、去年の日付のままになっていた祝日を、敢えてカレンダーの誤記通りに祝ったのである。
(*住人「ら」というと、他にもいる? 「去年の日付のままになっていた祝日を、敢えてカレンダーの誤記通り」の部分が読んでいてピンと来ないです。「祝日を敢えてカレンダーの誤記通り……」で十分では?)

8.

けれどもランビーに住む人々は、1年間だけ休日を他の地域と合わせずに過ごすのも面白いかもしれないと思い、それからの12ヶ月をカレンダーに書かれている通りに過ごした
(*休日については上述。「そのカレンダー」かな。)

9.

ランビーの住民は、公式に掲示されたものではなく、わずか1年間、つまりは次の12ヶ月、このちぐはぐな国民の休日に従って生活してみてるのもきっと面白いのではないかと思った。
(*「公式に提示」って、祝祭日って提示されるものかなあ。「わずか~つまり」の部分は単に同じ表現を嫌っただけですよね。「ちぐはぐな国民の休日」は読んでいる方には分からないと思います。もう一工夫。)

10.

だが、ランビーの町の人々は、1年だけ他の地域とは違ったことをしてみるのもおもしろいかもしれないと考え、そのカレンダーに従うことに決めた。
(*「他の地域とは違ったことをしてみる」。「地域」かなあ。「ほかとは」くらいでも良いかも。「違ったことをしてみる」はちょっと微妙だけど、読みやすいと思います。決めて、実際に従ったんだよね。)

11.

ある冬には、こんなこともあった。チャタム社が毎年恒例のカレンダーを出版する時、うっかり前の年の休日をのせてしまい、12月25日だけはその神聖さを保ったものの、6日もの重要な宗教的、歴史的祝日がずれてしまったのだ。しかしランビーの住人たちは、一年くらいなら他の国と違った日々を送るのも悪くない、と間違ったカレンダー通りにその翌年を過ごしたのである。
(*「12月25日だけはその神聖さを保った」ってちょっとわかりにくくないですか? 「十二月二十五日が聖なる日であることは変わらなかったが」とか。「歴史的祝日」は「歴史的な祝日」とすると読みやすくなるでしょう。「6日もの」もわかりにくいです。「最大六日」ですよね。「他の国」ではなく、「アメリカの他の土地」。「その翌年」というよりは、「その年」かな。)

12.

しかしランビーの住人たちは、一年くらいよその地域と足並み揃えないのも面白かろうと考え、一年間、忠実にそのカレンダーに従ったのだった。
(*「足並み_を_揃えない」ですね。一年を繰り返さない工夫をするとなお良かったかも。)

13.

だが、ランビーの住人は、一年間だけつまり来年の12ヶ月間国の休日と合わせないのは面白いかもしれないと思い、書かれた文字通りに従った。
(*「来年の12ヶ月間国の休日」という部分、とても読みにくくありませんか? つまりではなくて、soの前で一度文章が切れるんですよ。)

14.

ところが、ランビーの住人たちが出した結論は、祝祭日が他の土地とずれているのも1年くらいなら面白いかもしれないというものだった。そういうわけで、その12ヶ月間については、カレンダーに印刷されたとおりの日づけに従ったのである。
(*原文のアイデア自体はきちんと訳せていると思いますが、文章は切らない方が良かったように思います。あと「その12ヶ月間」というのはちょっとピンと来にくいかもしれません。)

15.

ところがランビーの住民は、1年ぐらい余所と違っていても面白いじゃないかと考え、それからの1年間を誤って印刷されたカレンダーどおりに過ごした。
(*ああ、これはとても流れが良いです。読みやすいし。)

16.

だが、ランビーの住人たちは、一年だけでも国の他の地域とズレてみるのも面白かろうということで、以後12ヶ月、文字通り去年の祝祭日どおりで行くことににしたのだ。
(*「国の他の地域」がちょっと気になりますが、これも悪くないんです。ただ「行くことににしたのだ」ですべてが台無し。提出前に一度くらい読み返しましょうよ。)

17.

ランビーの住民は、だけどまあ、たった1年くらい国の他の地域とずれているのも面白そうだと考え、その後12カ月このこよみを忠実に守った。
(*「だけどまあ」が冗長です。「このこよみ」はひらがなにすると読みにくいですね。少し口語っぽくなりすぎています。)

18.

しかし、ランビーの住人達は、1年間だけ国内の他の地域と暦が異なるのも面白そうだと考え、それからの12ヶ月間はそのカレンダー通りに過ごしたのである。
(*「暦」と「カレンダー」を両方出すと何かあるのかなあと逆に引っかかる感じがします。「国内の他の地域と暦が異なる」はいっそ「よそとは暦が異なる」くらいにまとめた方がいいかも。)

19.

しかしランビーの住人たちは、たった1年くらい、国中の他の地域と合っていないのもおもしろいのではないかと思った。そして、次の12ヶ月間、カレンダーに書かれた文字に忠実に従ったのだった。
(*「たった」が気になります。「くらい」を使っているから省いてもいいかな。「国中の他の地域」もちょっと違和感あり。原文は一文なので、ここは「~と考え、次の」のようにつないだ方が良いです。)

20.

しかしランビーの住民は、一年くらい他の国民と違ったことをするのも面白いのではないかと考えて、それからの十二か月、きちんとそのカレンダーどおりに過ごした。
(*「他の国民」は別の国の人にも読めますね。「きちんと」なのかな。「どおり」だけでも意味は通じるように思えますし、あるいは「文字通りそのカレンダーに従って」とか。)

21.

けれどもランビィの住人の間では、一年だけ国中の他の地域とずれているのも面白いかもしれないということになり、続く十二カ月間、そのカレンダーに忠実に従ったのである。
(*ほぼOKなんですけど、「国中の他の地域」が気になります。正確には「国中」という部分ね。シンプルに「国内」とか逆に「アメリカの」としてもいいかもねえ)

22.

けれどもラムビーの住人たちは、国の他所と一年だけ祝日が同じではないというのもおもしろいかもしれないと考え、次の十二ヶ月は文字どおり暦に従うことを決めたのである。
(*「ランビー」ですね。「国の~考え」の部分は読点を打つような工夫をしないとちょっと読みにくいです。決めて、実際に従ったので、時系列を大切にしてください。)

23.

まあでもランビーの住人たちは、一年だけ、他のみんなからずれるのも面白いかもしれないと思い立ったので、それから12ヶ月の間、忠実に記されてある通りに従った。
(*「まあでも」というのはやはり口語っぽいです。「思い立つ」は「何かしようと決心する。その気になる」ですから「ずれてみよう」とかだったら良いんでしょうが、「面白いかも知れない」というのはやっぱり決心じゃないよねえ。)

24.

ランベィの住人たちは、やはり、同調からはずれ、残る大地とともに一年という間、詰まり、この先の十二ヶ月という間が滑稽になるだろうと暗示し、書かれた言葉の字義を辿るのであった。
(*「ランベィ」はさすがにアウト。「同調から外れ」は辞書ひいてください。うーん、ネット翻訳で訳したみたいな訳文になっています)

25.

ところがランビーの住民たちときたら、国内の他の市町村と一年間だけ祝祭日がずれるのも愉快じゃないかと考えたものだから、その冬から向こう12カ月間は、誤って記された祝祭日のとおりにきっちりと祝ったのだった。
(*これも口語っぽいです「~ときたら」というのは少し崩しすぎ。「祝祭日」という言葉が繰り返されているのも少し気になります。市町村はさすがに国内制度が違うから使わない方がいいかと思います。)

26.

ところがランビーの人たちは、1年だけだったら国のほかの地域とずれていてもおもしろいんじゃないか、ということになって、向こう12か月、カレンダーに標された通りきっちりと祝祭日を祝った。
(*「ランビーの人たちの間では」かなあ。「祝祭日」と「祝う」の「祝」が重なるのもちょっと気になるんですけどね。)

27.

けれどもランビーの住人たちは、1年間だけ町の外とはまた違う生活をするのもおもしろいかもしれないと考え、翌年は文字通りカレンダーに記された日付にしたがったのだった。
(*「町の外」はいいんですけど「違う生活」は微妙かなあ。「違ってみる」くらいにしておいた方がいいかも。カレンダーに記された「日付」じゃないです。日付は「文書などにその作成または提出した年月日を記載すること。また、記載した年月日」だったりします。)

28.

けれどもランビィの住人たちは、面白そうだと考えた。たった一年の間だけ、よその土地のカレンダーとずれた毎日を送る。この十二ヶ月間は、ランビィのカレンダー通りに過ごしてみようというのである。
(*工夫は感じられるんですけど、時系列が狂ってます。「やってみようと考えて、実際にやってみた」と書いてあるんですよ。)

29.

だが、ランビーの住民は、たった一年なら国内の他の場所と祝祭日が同じでなくても面白いんじゃないか、というわけで、来年一年間は、そのカレンダー通りにすることにしたのだ。
(*これも時系列が微妙にずれています。来年というとこれから来る感じですよね。でも実際にはこれは過去のできごとですから、たとえば「それから一年間」なんですね。)

<全体コメント>意味はそれなりに取れている人が多いんですけど、時間の流れが崩れている人も少なくありません。たぶん訳文を工夫しようとしてやりすぎてしまっているのだと思うんですが、もともとランビーでかつてこういうことがあったという話ですから。違ったことをやってみようと考えて、それを実行に移した、という意味なんですよね。そこの部分はいじらない方が良いです。あと、本当は前の文章からあまり文言を持って来すぎない方が良いです。その文章の中で工夫するということね。翻訳って面白いですよ。だいたい一番最初の訳文が一番良い訳文(あとで気付いた誤訳は別ね)で、細部に手を入れて、いじくるほどおかしくなっていきます。これは流れというのが大切だからだと思います。だから逆に最初に訳す前に、内容をしっかり把握しておくことが重要です。

第12回ウルトラショート翻訳課題 MVP

その意味で、今回は流れ重視でMVPを選ばせてもらいました。ということで15番、西岡宏子さんおめでとうございます。精進してね。

■第13回 ウルトラショート翻訳課題

<課題文>

“We can break into the new van.”
“Break in the new van.”
“What is this difference?”
“If we did it your way, we’d get arrested.”

会話部分のみを課題文にしますね。口調はお好みで。本文中に示した全体の流れを読んだ上で、上の4つのセリフを訳してください。各文のあとに改行を入れてください。ではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★