第14回 仕事三昧中の時間かすめとり読書

一行翻訳コンテスト2008.06.16

■オススメの一冊
「獲物」シリーズも一緒に読むと作家の視点の違いが楽しめる

『The Devil’s Code』
(John Sandford著、Berkley社刊)

The Devil's Code

そんなこんなでなかなか本を読
む時間も取れないのですが、移動の電車、風呂などを駆使して(笑)、無理矢理時間を見つけています。

今月まずご紹介するのは、今回が2度目の登場となるジョン・サンドフォード(John Sandford)。以前ご紹介した「獲物」シリーズとは別の「Kidd」シリーズ。こちらはアーティストでコンピューターの達人でプロの犯罪者、キッドと相棒のルーエレンが登場するハイテク・スリラーです。獲物シリーズが警察官であるルーカス・ダベンポートを中心とした視点で描かれているのに対して、こちらのシリーズ(これまでに「The Fool’s Run」「The Empress File」「The Devil’s Code」「The Hanged Man’s Song」の4作が発売中)の方は、視点が逆の立場なので、たとえば監視カメラ一つとっても、前者ではどう死角をなくすか、後者ではどう死角を見つけるかという対比があり、両方読むと二重に楽しめます。(ちなみに「獲物」シリーズは現在「Phantom Prey」がハードカバーで、「Invisible Prey」がペーパーバックで発売中)。最近はさらにVirgil Flowersシリーズも加わって、創作意欲もますます盛んということでしょうか。

今回ご紹介するのは、「The Devil’s Code」で、キッドの友人が企業に侵入し、警備員に発砲して射殺されたという連絡が入ります。でもこの友人は銃が撃てないことが分かっています。さらに何者かによって、キッドの裏のネット社会におけるハンドルネームが、この友人と一緒にハッカー集団の一員として報道されてしまいます。自分の立場を守り、友人の死の謎を解くために、キッドは時に死線をくぐりながら、ルーエレンと共に事件の真相に迫っていくというストーリー。なかなか面白そうでしょう? 法律事務所の勉強にはJohn Grishamを読むと良いと言いますが、このシリーズはちょっとしたパソコン用語を覚える上でも悪くありません。前回の課題文ではありませんが、チャットが出てきたりします。

DEAD? ARE YOU SURE? WHEN AND WHERE?
LAST FRIDAY IN DALLAS. SUPPOSEDLY SHOT TO DEATH DURING BREAK-IN AT SOFTWARE COMPANY CALLED AMMATH.
DID NOT KNOW. WILL CHECK IMMEDIATELY.

みたいな感じ(これは今回の課題文じゃないよ)。いろいろな本を読んでいると、知らないことがやっぱりたくさんあるなあと思う一方で、とにかく何でもかんでもインプットしていかないと上達しないなあと思うことがしょっちゅうです。でも難しい本を読むと眠くなるので、やっぱりミステリーとかは趣味と実益を兼ねていていいなあと思うのでした。

■今月のペーパーバック
ハワイで発掘した新人作家のデビュー作
『The Nymphos of Rocky Flats』
(Mario Acevedo著、HarperCollins Publishers刊)

The Nymphos of Rocky Flats

今月の2冊目。こちらは今回ハワイで拾ってきたシリーズもの。マリオ・アセベド(Mario Acevedo)という作家の私立探偵物ですが、主人公のフェリックス・ゴメスはイラク戦争の間に吸血鬼になってしまったという人物。これまでに3作が出ているんですが、まあタイトルを見れば内容に見当が付くでしょう。「The Nymphos of Rocky Flats」「X-Rated Bloodsuckers」「The Undead Kama Sutra」ですから。

今回ご紹介するのはシリーズ第1作で、エネルギー省の友人から、コロラドのプルトニウム処理場で不思議な事件が勃発しているので調べて欲しいと頼まれるところから話は始まります。ここに地元の吸血鬼コミュニティーにおける殺吸血鬼事件、ロズウェル事件、「プロジェクト・レッドライト」といったいかにもなネタが絡んできて、意外な結末まで一気に読ませてくれます。デビュー作ということで、多少謎解きに甘さもないわけではないですが、お下劣系も大丈夫な人には軽い読み物としてお勧めかも。

■第13回 ウルトラショート翻訳課題の講評

さて、今月は何と50人の方からご応募いただいてしまいました。ありがとうございます。ということで、早めにコメントへ行ってしまいましょう。

<課題文>
“We can break into the new van.”
“Break in the new van.”
“What is this difference?”
“If we did it your way, we’d get arrested.”

<解説>
いろいろアイデアが考えられるわけで、元の表現ではbreak intoが「押し入る」とか「侵入する」(動詞+前置詞)、break inが「慣らす」(動詞+副詞)という表現なんだけど、外国人だとつい間違いがちなところ。日本語でこのへんのおかしさを表現するのはけっこう工夫が要ります。一つの方法論というのはいわゆる同音異義語を当てちゃうという方法。僕のおとうとくんは、子供の頃「灯台もと暗し」を「東大元暮らし」で東京大学のそばで暮らすことだと思っていたそうです。ただ、原文の二つの表現の違いはあくまでinとintoの違いですから、あまりかけ離れたものを持ってきてしまうとちょっとイメージ違うかな、と。逆にbreak intoとbreak inを間違えられるというのはそれなりに英語ができているということですから。

別の方法としては、似たような音を持つ言葉で入れ替えるというのがあります。これは「ヘキサゴンII」とかで里田まいとか上地雄輔が間違うパターン。言葉を「だいたいこんな感じ」で覚えているパターンで、基本的に意味は分かっているんだけど、自分からアクティブな語彙として使えないというパターンね。「○○にも五分の魂の○○に入るのは?」とたずねられて、「一寸法師」と答えるような場合です。「いっすんのむし」と「いっすんぼうし」は音としては似ているでしょ。

だからちょっと覚え違えたのがえらく違う意味になっているという感じに訳せると良いと思います。前者のパターンでいえば「慣れる」と「荒れる」が例ね。後者の場合だと「路上教習」と「路上強襲」みたいな感じ。(こっちは音が一緒だからちょっと難しいかな。)

ほかにまったく別のダジャレとかに変えてしまうというパターンがありますが、これはよっぽどうまくやらないと逆に話の流れが崩れちゃうかも知れません。たとえば「ガソリンが切れたらどうする」「車を襲おう」「押そう」みたいな感じ。言葉って面白いですよねえ。

<一応試訳>
■試訳1
「新しいバンの運転が荒れていいね」
「慣れて」
「どこが違うの」
「あなたのやり方だと、逮捕されちゃうわ」
■試訳2
「新しいバンの路上強襲というところだね」
「路上教習」
「何が違うんだい」
「あなたのやり方だったら、警察につかまっちゃうわよ」

それではみなさんのを拝見します。50人分、がんばるぞ、えいえいおー。

1.
新しいトラックに侵入できるね。
新しいトラックを 試 運 転。
え? なにが違うの?
侵入しちゃったら犯罪でしょ。「し」しか合ってないし。

(*原文にあるから、ちゃんと括弧に入れましょうね。「試・運・転」の方がいいかな。侵入と試運転はさすがに間違えないと思うよ。)

2.
「新しいバンのアラシ運転ができる」
「ならし運転だ」
「どんな違いがあるんだ」
「車をアラシたら,逮捕される」

(*文芸の時には「,」じゃなくて「、」を使ってね。縦書きが前提だから。アイデアは悪くないですがM.J.は女性だからちょっと口調が合わないよね。)

3.
“その新車のバンに押し入ろうぜ”
“乗り込むだろ”
“何が違うんだよ”
“お前の言うようにやったら、おれら逮捕されちゃうぞ”

(*これもアイデアは悪くないですね。口調が合っているとよかったなあ。)

4.
「新しいバンをうまく乗っ取れる(・・・・・)さ」
「ええ、乗りこなせる(・・・・・・)わ」私はやさしく言いなおした。
「どう違うのかね?」
「博士のやり方だと、お縄になっちゃうのよ」

(*「私は~言い直した」は別になくてもいいです。ただ「バンをうまく乗りこなせるわ」って現実には言わないんじゃないかなあ。あと「お縄」はちょっと古い感じがするけど(^-^;)

5.
「新しいバンを乗り荒らせばいい。」
「新しいバンを乗り鳴らすよ。」
「どう違うんだ?」
「あなたの方だと、逮捕されちゃうの。」

(*「乗り荒らす」って普通言わないよねえ。「乗り鳴らす」は誤変換だと思います。出す前に見直してねえ)

6.
「新しいバンを乗り荒らせばいい。」
「新しいバンを乗り鳴らすよ。」
「どう違うんだ?」
「あなたの方だと、逮捕されちゃうの。」

(*「乗り荒らす」って普通言わないよねえ。「乗り鳴らす」は誤変換だと思います。出す前に見直してねえ)

7.
「新しいバンの車上荒らしができるな。」
「っていうか、新車を乗りならす…。」
「どう違うんだい?」
「車上を荒らしたりしたら、逮捕されるわよ。」

(*うーん、これもちょっと無理があるかなあ「車上荒らし」と「新車を乗りならす」だとちょっと韻も合ってないし。)

8.
「新車に忍び込めるんだもんな。」
「新車を乗りならす。」
「どこが違うんだ?」
「あなたの言うとおりにしたら、捕まっちゃうわよ。」

(*「乗りならす」と「忍び込める」って覚え違えるかなあ? 「乗り回す」と「乗り慣らす」とかなら覚え違えそうだけど。そのあたり、何でもいいというわけにもいかないんだよねえ。)

9.
「新しいバンに乗り込もう。」
「新しいバンに慣れましょう。」
「違いは?」
「あなたのやり方だと、捕まるわよ。」

(*「乗り込んで」も別に捕まらないと思いますが(^-^;)

10.
バンに暴れ込もう。
乗り込もうでしょ。
何が違うのさ?
暴れちゃったら捕まるわよ。

(*ちゃんと括弧を付けてね。「暴れ込もう」と「乗り込もう」だと実際に音を聞くとあまり似ている感じはないですが、字面だけだとけっこういけている感じですね。会話の部分はもう少していねいでもいいような。)

11.
「新車荒らしができるね」
「新車慣らしよ」
「どう違うの?」
「あなたのだと捕まっちゃうのよ」

(*これはかなりいい感じ。まあ片方が博士だから、もう少し大人っぽい感じでも良いかも知れませんが。)

12.
「新車荒らしができるよ。」
「新車慣らし、でしょ。」
「何が違うんだい?」
「あなたの言う通りにしたら、私達逮捕されちゃうわ。」

(*11番とほぼ同じかな。「私達」は開いた方がいいでしょうねえ。口調はこっちの方が少していねいかな。)

13.
「新しいワゴン車に忍び込めばいい」
「新しいワゴン車に乗り込む、よ」
「どう違うんだね?」
「忍び込んだら逮捕されちゃうわ」

(*これも字で見るとあまり違和感がないんだけど、音にしてみるとなかなか錯覚はしにくいでしょうねえ。)

14.
「新車のバンをパクって慣らせるしね」
「新車のバンを走って慣らす、でしょ」
「どう違うわけ?」
「あなたの言うようにしたら、逮捕されちゃうわ」

(*うーん、これもアイデアは悪くないんだけど、「ぱく」と「はし」だとやっぱり聞き違えないだろうなあ。あと「ぱくる」は「店先の商品などをかすめとる。また、金品をだましとる」とか「剽窃する、盗用する」だからちょっと違う気がします。)

15.
他人様の車を拝借して運転するのは慣れてますから。
知人の車、という意味ね。
「他人」と「知人」はどう違うのさ?
他人は自分と関わりのない人のこと。他人様の車を拝借したら、逮捕されてしまうわ。

(*括弧つけてね。考えてあるなあと思うんですが、「ひとさま」と「ちじん」を間違うのは難しいかもなあ。「たにん」と「ちじん」にしたほうがよかったかなあ。あと最後は説明的になり過ぎ)

16.
「僕らは新車に押し入ることができるからね」
「乗り込む、と言いたかったのね」
「何かおかしな言い方したかな?」
「あなたの言い回しが正しかったとすれば、私たちまるで犯罪者だわ」

(*うーん、微妙かな。少しいじりすぎているような気がするんですね(特に最後の行)。家とかだったら「押し入る」でもいいんだろうけど。)

17.
「新しいライトバンの荒らし運転になるさ」
「慣らし運転」
「なんか違ってる?」
「あなたが言った通りにしたら、私たち逮捕されるわ」

(*これもアイデアは基本的に良いです。ただ日本語のライトバンというのはstation wagonだと思うけど)

18.
「ええ、問題ありません。」スティーブンは答えた。「新しいバンにおシコミができますね。」
「新しいバンをならすこと。」私はやんわりと訂正した。
「どう違うのですか?」
「あなたの言うようにしたら、私たち、逮捕されてしまうわ。」

(*これも考え方は悪くないんですが、考えないと何が面白いのか分からないのが問題だよねえ。「仕込む」を使ったところは悪くはないんだけど、「ならす」とうまくかみ合ってない感じ。)

19.
「その新しいトラックを荒らせるぞ。」
「試せるだよ。」
「どう違うんだい。」
「そのトラックを荒らしたりなんかしたら、逮捕されるよ。」

(*「あらせる」「ためせる」だから韻はかなり合っているかなあ。ただバンはトラックじゃないよねえ。)

20.
「新しいバンのあらしもできる」
「新しいバンのならしもできる、よ」
「違いは?」
「慣らしじゃなくて荒らしだと、逮捕されるわ」

(*ひらがなで最初から出してしまうと、いかにもわざとらしく見えません? でも1文字だけの間違いというのはありそうな感じで良いです。あと2行目は名詞部分を強調して「ならしもできる、よ」の方がすっきりするんじゃないかな。)

21.
「新しいバンを踏み込めるね」
「新しいバンを乗りならすでしょ」
「どこが違う?」
「あなたの言う通りにしたら、私たち、逮捕されちゃうわ」

(*「踏み込める」自体がそもそも「踏み込む」だから「場所・建物などに予告や許可なく入る」という意味になっちゃうよねえ。アクセルとかと同じように使ったというニュアンスかも知れないけど、それだと「乗りならす」と少し離れすぎ。)

22.
あの新車を車上荒らしできるぞ
新車の慣らし運転をする
これらの違いは?
君の好きなようにやったら私達は捕まること間違いない。

(*括弧を付けてね。句点があったりなかったりというのもまずいです。会話で「これらの違いは?」って聞いたことある? 何か機械翻訳みたいになってます。)

23.
「新車のバンを乗っ取れば、休めるから」
「新車のバンに乗ってれば、休めるから」
「何か違った?」
「君の言い方だと、逮捕されちゃうよ」。

(*アプローチとしては悪くないです。ただこれだとたまたま言い違えたようにも響きますが。それよりも「新車のバン」って普通言わないんじゃないかなあ。「新しいバン」とかじゃない?)

24.
「新車のバンを『荒らす』っていうのはどうかなあ」
「新車のバンを『慣らす』、でしょう」
「何がどう違うんだい」
「もしあなたの言うとおりにしたら、私たち捕まっちゃうわよ」

(*けっこうこれもいい感じなんだけど、「新しいバン」とかなるんじゃないかなあ。ただ荒らすと慣らすの対比はうまく出ています。)

25.
「僕たちが新しいヴァンを<乗っ取る>のにちょうどいいし」
「<慣らし運転する>でしょ」
「たいして変わらんだろ?」
「もし、あなたの言うとおりにしたら、私達、逮捕されちゃうわ」

(*<乗っ取る>と<慣らし運転>の間の結び付きが分からないよねえ。これだと何でこういう会話が成立したのかがはっきりしなくなってしまいます。もっと工夫してみましょうね。)

26.
新しいバンに押し込もうじゃないか。
「乗り込もう」だよ。
違った?
「押し込もう」だと捕まっちゃうよ。

(*括弧はちゃんと使いましょう。あと女性はやっぱり女性っぽく訳すといいですよね。ニュアンスはいい感じで出ているとは思います。)

27.
「あの新車のバンを乗っ取ればいい」
「あの新車のバンに乗って行けばいい、でしょう」
「どう違うんだ」
「あなたの言うようにしたら、私たち捕まっちゃうの」

(*「あの新車のバン」って説明的すぎません? 「新しいバン」にした方がずっとすっきりしますよ。声を出して読んでみてね。そうすると感じがわかるから。)

28.
「新しいバンのオドシ運転ができるね」
「ナラシ運転でしょ」
「何か違うの?」
「オドシ運転なんかしたら逮捕されちゃうわよ」

(*「脅し運転」という言葉自体がちょっと日本語として違和感がありますよねえ。オドシとナラシ自体、「シ」以外あんまり似てないし。もう一工夫。)

29.
「新しい車のやつおろして運転しますから。」
「新しい車『を』卸す、だよ。」
「どこが違うですか?」
「君の言う通りにしたら、俺たち捕まるぜ。」

(*「車のやつおろして運転」してなんで警察に捕まっちゃうんでしょうか? 読んですぐにピンとこないとだめだよ。あと「どこが違うですか?」は少しやりすぎに思えます。)

30.
「新しいバンを乗っ取って行こう。」
「バンは乗って行くものよ。」
「どこが違う?」
「そんなことしたらお縄を頂戴しちゃうわ。」

(*ああ、これは結構いいかも知れない「乗っ取っていく」と「乗って行く」ね。ただ「お縄を頂戴」はちょっと古い感じがするかなあ。)

31.
「では、新しい車を“荒らす”としますか」
「それを言うなら“慣らす”でしょ」
「一文字違うだけでは?」
「ええ、でも刑務行きになるほどの違いですけどね」

(*うーん、最初の2行は悪くないんだけど、そのあとがいじりすぎかな。やりたいことは分かるんだけど、凝りすぎはよくないのよねえ。最初の2行はいじくってもいいんだけど、残りの2行は特に凝った会話ではないのでねえ)

32.
「新車のバンに押し入ろうぜー。」
「慣らし運転するだろ?」
「何が違うんだよ?」
「それじゃ、逮捕されるぞ。」

(*男女の会話になってないよねえ。あと「押し入る」と「慣らし運転」ではまったくつながりが見えないです。外国人が微妙に表現を間違っているんで、そこの雰囲気をまず再現しないと。)

33.
「新しいバンを乗っ取れるぞ」
「新しいバンに乗ってける、でしょ」
「どう違うんだ?」
「あなたが言ったのだと逮捕されちゃうわよ」

(*こうやってチェックしていると分かるんですけど、やっぱり「を」と「に」みたいに助詞まで変わっちゃうと何か無理矢理という感じがありますね。あとやっぱり韻が違っていても苦しい感じ。そのあたりもう一工夫してみてね。)

34.
「あの新しいワゴンをぶっ飛ばせるぞ」
「新しいワゴンで、でしょ」
「どこが違うんだい?」
「あなたの言う通りにしたら、私達捕まっちゃうわ」

(*これは逆に助詞だけを使い分けたパターンなんだけど、「車をぶっ飛ばす」でも「車でぶっ飛ばす」でも読者が受ける印象はスピードを出すという意味になっちゃうよねえ。「ぶっ壊せる」と「ぶっ飛ばせる」だったらなんか分かる気もするんだけど)

35.
「新しいバンを乗っ取って休めばいい。」
「『新しいバンに乗って休む』ですよ。」
「何が違うの?」
「博士の言ったとおりにすると、捕まっちゃいますよ。」

(*これもやはり助詞が変わっていますね。やっぱりちょっと無理があるかなあ。これなら「乗っ取ってから休めばいい」と「乗ってから休めばいい」だけにしちゃった方が良かったんじゃないかなあ。バンの部分出さずに)

36.
「新車荒らしができるよな。」
「新車慣らし、でしょ。」
「その違いは何なんだよ?」
「あなたの言ったようにやると、警察に捕まることになるわよ。」

(*「新車荒らし」とか「新車慣らし」って現実に言うかなあ。)

37.
「新しいワゴン車をブレイクすれば大丈夫。」
「新しいワゴン車でブレイクね。」
「何が違うの?」
「スティーブの場合だと捕まっちゃうの。」

(*「ブレイク」ってさすがにまだ日本語では「壊す」とかいう意味では定着してないと思います。最新版は分からないですが、手元にある広辞苑の5版には「成功する」という意味の方もまだ載ってなかったくらいです。だからちょっと無理がありすぎ。)

38.
「じゃあ新しいバンをかっぱらうとするか。」
「バンに忍び込む、でしょ。」
「どう違うのさ?」
「派手にやったら、捕まっちまうわよ。」

(*「かっぱらっても」「忍び込んでも」どっちにしても捕まっちゃうと思うんですよ……。派手にやらなくてもねえ。元の話が車で移動するというだけだし。)

39.
「あの新しいバンでながら運転しようぜ。」
「慣らし運転をな。」
「如何違うのんだよ。」
「君の言う通りにしたもんなら、つかまっちまうよ。」

(*両方男になってますねえ(^-^; 「ながら運転」って自分から意識的にすることでしょうか。運転手が「テレビでも見ようか」とか言って、実際に行う「危険運転行為を含む、他の動作を取りながら行う運転行為」がながら運転だから、具体的な行為を伴わずにそういう言い方はしないと思います。「如何違うのんだよ。」は「の」が余分?)

40.
「新しいヴァンに入れる(ルビ/break into)ね」
「新しいヴァンを慣らせる(ルビ/break in)です」
「そんなに違うのですか?」
「博士のようにしたら、逮捕されてしまいます」

(*英語のルビというのは無謀だぞー(^-^; それに「入れる」としても問題はないと思うんですけど。break intoとbreak inの意味の違いからきちんと把握しましょう。)

41.
「新しいバンでぬすめるからね」
「新しいバンで、休める、ですね」
「どう違うんだ」
「それをやったら、私たち逮捕されてしまいます」

(*「ぬ」と「や」の1文字というのは悪くないかな。ただ「ぬすむ」と「やすむ」を間違って覚えるかなあ。「くすねる」と「ねる」とかもありかなあ。)

42.
「新しいライトバンの荒らしができるぞ」
「新しいライトバンの馴らし」
「どこが違うんだ」
「それだと刑務所行きになるわね」

(*こちらは「あ」と「な」のパターン。ただ「ライトバンの荒らし」とは言わないよねえ。「ライトバンを荒らせるぞ」「慣らせるぞ」みたいな感じかなあ。「新しいライトバン」を繰り返さない方がよかったかも)

43.
「俺たちはその新しいバンに押し入れられるぜ」
「その新しいバンに押し込められる」
「何が違うのさ?」
「私たちがあんたの言うとおりにしていたら捕まっちゃうわ」

(*「押し入れられる」っておかしくないですか? 「押し入れる」かな。ちょっと伝えたい意味が不明かも。何か、ボギーとクライドの間の会話みたいなんですけど(^-^; )

44.
「新しいバンに乗り込めばわけないさ」
「新しいバンに乗って、ね」
「どこがどう違うんだ?」
「あなたの言うようにしたら、捕まっちゃうわよ」

(*「乗り込んで」も別に捕まらないと思います。これが車でなくて、ビルとか屋敷とかだったらまだ分かるんですけどねえ。日本語の難しさが良く分かるなあ。)

45.
「新しいバンに、乗っとってみてもいい。」
「乗っといてみても、ですね。」
「何が違うのかね?」
「そんなことしたら、警察に捕まっちゃいますよ。」

(*「乗っとって」と「乗っといて」うーん。「乗っ取って」と「乗って」くらいにした方が読みやすいんじゃないかなあ。読者が読んでいてすーっと入ってくる方がいいと思うのですよ。博士、少しお年寄りっぽいかも。)

46.
「あの新車のバンで暴走しよう。」
「それを言うなら疾走ね。」
「どう違うんだい?」
「もしあなたの言う走りをすれば、逮捕されるわ。」

(*これも悪くないです。ただ「暴走」だけで逮捕されるかなあ。それなら「捕まる」くらいにしておいたら良かったかも。)

47.
「新しいバンの車あらしができる」
「新しいバンの車ならしね」
「なにが違う」
「あなたのやり方だと、捕まるの」

(*「車ならし」はネットとかで見ると使われてはいるんだけど、ぎりぎりかなあ。「なにが違う」はちょっと偉そうな感じがします)

48.
「新しいワゴンを乗っ取ればいい。」
「新しいワゴンに乗り込む、だろう。」
「どう違うんだ?」
「君の言う通りにしたら、みんな捕まってしまう。」

(*「乗っ取る」と「乗り込む」ってあまり覚え違いをしないような気もします。あと会話が男同士になっているような。)

49.
”あの新車のバンを’可愛がる’ってのもいいね。”
”新車の’慣らし’運転でしょ。”
”違いは何さ?”
”あなたのやり方だと、逮捕されちゃうってことよ。”

(*「”」は基本的に縦書きの時には使わない方がいいです。「可愛がって」も逮捕されないと思いますよ)

50.
「その新しいバン,ぬすんでいこうぜ。」
「ぬすんで,じゃなくて,やすんで,でしょ。」
「何か間違えたかな。」
「あなたの言う通りにしてたら,私たちは逮捕されてるわ。」

(*「,」ではなく「、」ね。(縦書きになるから。)「バン、やすんでいこうぜ」って文章として成立しないです。だからそういう間違いはやっぱりなしかな、と。)

<講評>

傾向として、まずシャレの部分に気を取られすぎて、地の文がおろそかになってしまっている例が多かったようです。けっこう工夫はいいのに、他の部分が今ひとつでMVPを取り損ねた人多々あり。30、41、46のどれにしようか悩みましたが、最終的に30番にMVPを差し上げることにしました。この間にはそんなに差はなかったと思ってください。いろいろなパターンがあって楽しませてもらいました。ちょっと大変だったけど、全員分、コメントしてみました。ふー。

第13回ウルトラショート翻訳課題 MVP

大込 学さん
おめでとうございます!

■第14回 ウルトラショート翻訳課題

<課題文>

「The Devil’s Code」から。(pp.122-123) 殺された人物の妹、そのガードマン、ルーエレン、キッドの会話です。Iがキッド(男性)、グリーンがボディガード(男性)。残り2人は女性です。キッドとルーエレンはかなり親しい間柄です。Firewallというのは報道されているハッカー集団で、This guy、Mason、Kiddがその一員として報道されているというわけです。

“What’d you find out about Firewall” Lane asked.
“Nothing,” I said. I ran it down for her.
“This guy who went to Mexico,” Green said. “He could have gone for more than one reason. You’re assuming he went because he was scared because he was on the list, like Mason. But what if he’s running bcause he is with Firewall?”
“I mentioned that,” LuEllen said. “Kidd didn’t buy it. He’s got a theory.”
“What’s the theory?”

“There is no Firewall,” I said. “It’s bullshit, made up out of whole cloth.”

太字の部分のみ訳してください。(他の部分は流れを見てもらうための参考用です。)

それではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★