第15回 作家の調査力・想像力の豊かさに脱帽

一行翻訳コンテスト2008.07.16

■オススメの一冊
コンピュータ時代に生まれた、驚愕のサスペンスストーリー

『The Blue Nowhere』
(Jeffery Deaver著、Pocket Books社刊)

The Blue Nowhere

ということで今月の作品から。今月取り上げるのはJeffery Deaverです。この人は映画化された「The Bone Collector」で日本でも知られるようになりましたが、それ以前からなかなか面白い作品を書いていました。最初にこの作品(小説の方です、映画は怖くて見てないです)を読んだのはたまたま書店で手にとってだったと思いますが、いわゆるpage turnerで、寝る間を惜しんで読了してしまいました。事故により四肢が麻痺している名探偵、リンカーン・ライムとその部下であるアメリア・サックスのコンビが登場するこのシリーズは、法科学の詳細な描写、全編を通じて漂う緊張感、意外な犯人の正体、そして驚愕のエンディングとすべてが揃った傑作であり、作品自体としてとても楽しめる内容となっていました。その後、Deaverはこのシリーズを書き続け、いずれもベストセラーとなっています。さらに最近ではKathryn Danceという女性捜査官を主人公とした新しいシリーズも始めたようですが、今回ご紹介するのは、あえて単発物、「The Blue Nowhere」です。この作品は、政府のコンピューターをクラッキングしたということで収監されているハッカー、ウィリアム・ジレットが、カリフォルニア州警察のコンピューター犯罪班に協力して、シリアル・キラーにしてこれまた天才ハッカーであるフェイトと対決するというものです。ペーパーバックで500ページに及ぶ大作ですが、警察の動きとフェイトの動きを交互に示すことで、お互いの相手の動きの読み合いを描き出すと共に、ジレット自身の抱えた秘密や、意外な犠牲者、さらにコンピューターやネットワークに関連するペダンティックな知識を織り交ぜて、とにかく飽きさせない構成となっています。Deaverの作品を読んでいていつも感心するのが、その豊富な知識。まあ、これはDeaverに限らず、古くは「薔薇の名前」から最近では「ダ・ヴィンチ・コード」まで、作家の調査力+想像力の豊かさにはいつも圧倒されてしまいます。そしてこの作品が書かれてから7年。その間の技術の進歩にもまた驚かされるのです。この作品に出てくる殺人者は、自らのアイデンティティーをカメレオンのように変えながら、殺人を繰り返していきます。そしてそのことを象徴的に表しているのが、CDで戯曲の朗読を聞いているというシーン。従って、「サラリーマンの死」や「ハムレット」といった有名な作品からの引用も出てきます。またコンピューターがらみの論文などもでてきます。

■今月のペーパーバック
『Binary』の著者が放つ最新作
『Zero Cool』
(John Lange著、Hard Crime Case刊)

Zero Cool

もう一冊は、これまたミステリーで、John Langeの「Zero Cool」。こちらは最近いろいろ読んでいるHard Case Crimeの作品で、1969年の作品。まだコンピューターも複雑怪奇な鑑識も出てこない、ある意味、古き良き時代のハードボイルド・ミステリー。X線技師のピーター・ロスは、1カ月の休暇を取るために、スペインのトッサ・デル・マールという避暑地にやってきます。選んだ理由は、きれいなお姉さんがたくさんいるから。何て分かりやすい。そこでピーターはさっそく海岸にいた美女、アンジェラ・ロックをくどくわけですが、デートを取り付けたその午後に、謎のスペイン人から、「すぐにスペインを出ろ、絶対に解剖をするな」と警告されます。さらにホテルに戻ると、今度はいかにもその筋の兄弟がたずねてきて、「アメリカに自分たちの弟の遺体を戻すために、解剖して欲しい」と頼まれます。ピーターはこの矛盾する依頼にどう応えるのでしょうか。そして彼は対立するギャング間の抗争に巻き込まれていくのです。楽しそうでしょ?

あとは読んでのお楽しみと言うことで、そろそろ今月のコメントに行きましょう。トータル30人、ご応募ありがとうございます。がんばります。

■第14回 ウルトラショート翻訳課題の講評

<課題文>

“Kidd didn’t buy it. He’s got a theory.”

“What’s the theory?”

“There is no Firewall,”” I said. “”It’s bullshit, made up out of whole cloth.”

<解説>

「The Devil’s Code」から。(pp.122-123) 殺された人物の妹、そのガードマン、ルーエレン、キッドの会話です。Iがキッド(男性)、グリーンがボディガード(男性)。残り2人は女性です。キッドとルーエレンはかなり親しい間柄です。Firewallというのは報道されているハッカー集団で、This guy、Mason、Kiddがその一員として報道されているというわけです。

 

とりあえずざっと訳してみましょう。

“What’d you find out about Firewall” Lane asked.

“Nothing,” I said. I ran it down for her.

“This guy who went to Mexico,” Green said. “He could have gone for more than one reason. You’re assuming he went because he was scared because he was on the list, like Mason. But what if he’s running because he is with Firewall?”

“I mentioned that,” LuEllen said. “Kidd didn’t buy it. He’s got a theory.”

“What’s the theory?”

“There is no Firewall,” I said. “It’s bullshit, made up out of whole cloth.”

 

上で色分けしたのは赤が女性のセリフ、黒が男性のセリフです。本当は一人一人で色分けしてもいいんですが、ここでは省略しました。

「ファイアウォールについて、何かわかったの?」レーンがたずねた。

「何も」私はそう言って、レーンに手短に説明した。

「このメキシコに行ったという男だが、そうした理由は別に一つだけじゃなかったんじゃないか」グリーンが言った。

「自分の名前がリストに載っていることにびびったからだと、あんたは考えているんだろう。でも、こいつが逃げ出したのが、本当にファイアウォールの一員だからだったとしたら?」

「私もそう言ったわ」とルーエレン。「キッドはそれはない、考えがあるって」

「どんな考えだい?」

「そもそもファイアウォール自体が存在しないんだよ」私は言った。「そんなのはうそっぱちで、すべてがでっちあげられたものなんだ」

みたいな感じかな。make up out of whole clothの定義は「if a story or excuse is made up out of whole cloth, it is not true. Yet the explanation was too strange for Joan to have made up out of whole cloth. 」(The Free Dictionaryより)

意味自体はそう難しくないと思いますが、うまくピンポンのようにはずむような会話が作れるかがポイントかな。

1.
「だけど、キッドの考えは違ってた。仮説を立てたの。」
「仮説?」
「ファイアーウォールは存在しない。」俺は言った。「そんなものはでたらめで、全くのでっち上げなんだ。」

(*「違ってた。仮説を立てたの」の部分の流れが悪いですよね。「全くの」は会話だから開いた方がいいと思います。)

2.
「だけどキッドに否定された。彼には別の仮説があるの。」
「どんな仮説?」
「ファイアーウォールなんて存在しない。」と俺は言った。「まったく馬鹿げている作り話だ。」

(*原文自体が能動態だから「否定された」にしない方がいいと思います。「別の仮説」というのはあまり言わないような気がします。「馬鹿げている」は「ばかげた」くらいにした方がいいかと。)

3.
「キッドはそんなふうに考えちゃあいないさ。 あいつには、思い当たるふしがあるんだ。」
「なんなの?」
「ファイアウォールなんて、存在しないってことさ。」とおれはいった。「でっちあげもいいとこの戯言だ。」

(*セリフの男女が逆になってます。説明をよく読んでくださいね。全体に無理にハードボイルド調にしてしまっているような気がします。「でっちあげもいいとのこ戯言」の部分、発想は悪くないので、もう少し言葉を選ぶといいですよ。)

4.
「キッドは違うって言うの。彼は彼で考えがあって」
「どんなさ?」
「ファイアウォールなんていやしない」俺は言った。「全部でたらめ、でっち上げなんだ」

(*「彼は彼で考えがあって」<これも悪くないんだけど「彼は彼で考えがあるって」とかの方がいいかな。あと「どんなさ」は口語はともかく書き言葉では使わない方がいいと思います。ファイアウォールは人ではないから「ありや」かな。)

5.
「キッドはそうは思ってないみたい。彼なりの考えがあるのよ。」
「考え?」
「ファイヤーウォールなんて存在しないんだ。事実無根のでっち上げさ。」

(*最初の行はいい感じ。「考え?」のところは書き言葉ということを考えると「考えって?」みたいにした方がよさそう。)

6.
「キッドはそう思ってないのよ。考えてることがあるんだって」
「どんな風にだ?」
「ファイアウォールなんてない」俺は言った。「そんなのウソなんだ。ありもしないでっち上げなんだよ」

(*「考えてることがあるんだって」は「考えがあるんだって」の方がすっきりするかな。いずれにせよ、このセリフに対して「どんな風にだ?」はリズム悪いです。「どんな?」くらいで止めた方がすっきりすると思いますよ。「~なんてない」は逆に弱いです。「~存在しない」とか。)

7.
「キッドはそうは思ってない。推論があるのよ」
「どんな?」
「ファイアウォールなんか存在しない。嘘っぱちのでっちあげだ」

(*推論はもちろん意味として間違いではないんですけど、会話では言わないんじゃないかなあ。実際、声に出して言ってみてください。怪しく響くから(^-^;)

8.
「キッドはそう思ってないわ。別の考えがあるの。」
「考えって?」
「ファイアーウォールなんて存在しないんだよ」と私は言った。「根も葉もない作り事、でっちあげということさ」

(*ああ、これは流れがいい感じ。「別の考えがあるって」の方がもっといいかな?)

9.
「キッドはそう思わないのよね。考えがあるみたいで。」「考えって、どんな?」
「ファイアーウォールなんて存在しないんだよ」僕は言った。「ただのでたらめだ、そんなもの有りもしない幻想さ。」

(*「ただのでたらめ」はくどい感じ。「有りもしない」は開いた方がよさそう。「幻想」というのは少し文脈からはずれるかな。)

10.
「キッドはそうじゃないというの。何か思いついたらしいわ」
「聞いてみたいね」
「ファイヤーウォールなんて初めからないんだ」と僕は言った。「でっち上げさ。見せかけだけというわけだ」

(*一行目は悪くないです。二行目の「聞いてみたいね」というのは、本人前にしている場合は「聞かせてくれないか」とかになるんじゃないかなあ。あるいは「話してくれないか」とか。)

11.
「キッドはそんなの真に受けないって。他に当てがあるんだ」
「どんな当てだよ?」
「そもそもファイヤーウォールなんて集団はないんだ。まったく、でっちあげもいいところだよ」俺は答えた。

(*「そんなの真に受けない」って実際には言わないと思います。「当て」というと「(1)めあて。目的。(2)みこみ。めあて。(3)たより。期待。」(大辞林)といった意味になるので、ここでは少し違うんじゃないかな。あと最初の行は女性。)

12.
「キッドの考えは違ったわ。彼には持論があるの」「どんな?」「ファイアーウォールなんて集団は存在しない」僕は言った。「でっち上げた偽物さ」

(*悪くないです。ただ「持論」というのは「あることに関して前から主張し続けている、その人独自の意見」ということですから、ちょっと意味ずれてますね。。)

13.
「キッドは納得しちゃいなかったわ。彼には持論があるのよ。」
「持論とは?」
「ファイアーウォールなんて集団はいない。」俺は言った。「デマさ。完全なでっち上げだ。」

(*これもいい感じなんだけど、「持論」が引っかかります。それ以外はいい感じなんだけどなあ。あと、「集団はいない」よりは「存在しない」の方が流れがよさそう。)

14.
「キッドは投げ出したりしなかったのさ。見当がついたんだよ」
「どんな?」
「ファイアーウォールなんていう集団は存在しないんだ」と僕は言った。「うそっぱちだ。でっちあげもいいとこだよ」

(*投げ出すというのはここでは意味違いますね。buyというのは「口》 〈意見・話などを〉受け入れる, 是認する, 信じる, 買う 」という意味です。「見当」は「未知の事柄について立てた見込み。予想」だからここではtheory=「推測, 臆測; 意見, 持論, 私見」といったような意味。)

15.
「キッドには通用しないわ。確信があるから」「なんだよ、確信って」「フェアウェルなんて存在しない。あれはガセネタ、でっち上げなんだ」と僕は答えた。

(*通用しないというと、ちょっとずれているかなあ。theoryは推測とかだからやっぱり「確信」は強すぎると思います。「フェアウェル」じゃなくてFirewallです。良く読んでね。)

16.
「キッドはそう思ってなかった。彼にはある考えがあるのよ。」
「ある考えってのは何なんだ?」
「ファイアウォールなんか存在しないってことだ。」私は続けた。「でっちあげで、全くのうそなんだよ。」

(*「ある考え」っていかにもわざとらしい気がします。「全く」は開いた方が。流れ自体は悪くないんですけどねえ。)

17.
「キッドは聞かなかったわ。考えがあったみたい。」
「考えってのは?」
「そんなグループは存在しない。」俺は言った。「でっちあげのほら話だって思ったんだ。」

(*「聞かない」というよりは「聞き入れない」かなあ。「あったみたい」というのは本人がいるところではあまり言わないと思うんだけど。ファイアウォールという名詞は入れておいた方がいいと思います。「ほら話」って「(3)大げさに言うこと。大げさなうそ。誇張した自慢。」みたいな意味なので間違いではないですが「法螺」から来ているので、翻訳ではちょっと微妙かなあ。)

18.
「キッドが、それはないって。持論があるみたいよ」
「持論?」
「ファイアウォールなんてないんだよ」僕は言った。「そんなのでたらめなんだ。でっちあげだってことさ」

(*持論については上述。それ以外はいい感じなので、まめに国語辞典を引くようにしましょうね。)

19.
「キッドには無意味な質問ね。もう尻尾をつかんでいるもの。」
「どういうことだ?」
「最初からファイアーウォールなんてなかったんだ。やられたよ。全てでっち上げだったんだ。」

(*「無意味な質問」、「尻尾」ともさすがにやりすぎ。逆に上の文脈だけで、質問が無意味だとか、尻尾を掴んだとか判断できないはず。「全て」は開きましょう。あと「やられたよ」も価値判断入っているでしょ。そうは書いてないです。)

20.
「キッドはそうは思ってないわよ。彼の意見を聞いたらどうかしら?」
「なにかあるのかね?」
「ファイアウォールなんてのは、実在しないんですよ。」と、私は言った。
「全く事実無根の丁稚上げです。」

(*「意見を聞いたら」とまでは言っていないです。「なにかあるのかね」はけっこう上から目線。日本語の場合、言葉の選び方一つで、お互いの関係が明らかになるので、そのあたりを工夫した方がいいです。「でっち上げ」は「捏ち上げ」=ねつ造という意味なので丁稚は関係ないです。)

21.
「キッドは買ってくれなかったけど。別の考えがあるんですって」
「どんな考えだい?」
「ファイアウォールなんてないんだよ」とキッド。「うそっぱちさ。何もかもでっちあげのね」

(*買ってくれないというと、何かおねだりしたみたいです(^-^; あとは割といい感じ。)

22.
「キッドにそんな助言は必要ないわ。もう彼の中で答えは出ているから。」
「どんな答え?」
「ファイヤーウォール集団なんて存在しないんだ。」私は言った。「そんなのほらだ、でっちあげさ。」

(*「助言」とは言ってないです。「彼の中で答えは出ているから」は原文の意味からははずれますが、アイデアとしては面白いと思います。ただ「ファイヤーウォール集団」というのはどうにも日本語として座りがわるいですね。「ほら」も同様。)

23.
「でもキッドは取り合わないのよ。彼なりの見方があるらしいの」
「どんな?」
「『ファイアウォール』なんていうハッカー集団は存在しない」私は言った。「でっちあげだよ、全くの」

(*「取り合わない」は「相手になる。問題として取り上げる。」なので、ちょっと微妙かな。「全くの」は開きましょう。その前のセリフはなかなかいい感じです。)

24.
「キッドはそんなこと思っちゃいないわ。ある考えに辿り着いたの」
「考え?」
「ファイアウォールなんて存在しない」俺は言った。「捏造だ。まったくのデタラメなんだよ」

(*「辿り着く」の「たどり」は開きましょう。それ以外は悪くないですが、「考え?」だけだと弱いかな。「考えって?」とか。)

25.
「キッドは信用しなかった。からくりが分かったの。」
「説明して。」
「ファイヤーウォールはない。」私は言った。「騙された、でっち上げだったんだ。」

(*a theoryだから本当にそうなのかは分かってないのですね。「からくり」というとちょっと違うように思います。「説明して」というのは女性のセリフっぽいかな。「騙された」とは言ってないんだよねえ。)

26.
「でもキッドは違うって。彼なりの考え方があるそうよ。」
「どんな?」
「ファイアーウォールなんて組織は存在しないんだ、」私は言った。「そんなのただのでっち上げなんだよ。」

(*「彼なり」ってたぶん本人の前では言わないと思うんですよ。「自分なりの」だろうなあ。全体の流れは割といい感じ。)

27.
「キッドは信じていなかったの。彼には持論があったのよ。」
「持論?」
私は言った。「ファイアーウォールなんて存在しないのさ。でっち上げの嘘っぱちってことだよ。」

(*信じてなかったというわけじゃないよね。持論については上述の通り。最後の行はいい感じです。)

28.
「キッドはその案は買わなかったわ。彼には持論があるの」
「なんだ持論って?」
「ファイアウォールはいない。」
私は言った。
「あんなもの全部でっちあげの、デタラメさ。」

(*「案を買わない」は今ひとつ。持論については上述。ファイアウォールは団体・組織ですから「いない」は使いません。)

29.
「キッドは買わずに、信念を貫いたんだわ。」
「信念だって?」
「ファイヤーウォールなんて、どうだっていいよ。」私は続けて、「くそくらえだ。でっちあげなのだから。」

(*buyはここでは買うという意味ではないのです。theoryは信念だとさすがにやりすぎ。ファイヤーウォールがどうだっていいよとは言ってないですね。「くそくらえ」はちょっと下品かも(^-^;)

30.
「キッドはその説には納得しなかったんですよ。持論があるんだ。」
「持論とは?」
「FireWallなんてものは存在しないと思っているんです。それは、でっちあげられたほら話なんだと。」

(*持論は上述。最初のセリフは女性ですから、ちょっとぞんざいかな。ファイアウォールは小説だからカタカナに訳しましょう。)

<講評>

辞書を引くと「theory」に「持論」があって、それに飛びついちゃったという人が多いと思うんです。ただ原文はHe’s got a theoryなんですね。持論というのは上にも書いたけれども「前々から主張していること」というニュアンスがあるわけです。でもそうするとその上の翻訳の対象ではない部分との文脈と合わなくなるんですね。最初の方にざっと訳した文章を書きましたが
「ファイアウォールについて、何かわかったの?」レーンがたずねた。
「何も」私はそう言って、レーンに手短に説明した。
という部分、何かを調べていたという文脈があるわけです。で、その過程でファイアウォール自体が存在しないんじゃないか、という考えに至ったと。持論として「ファイアウォールという団体が存在しない」という考えであれば、そもそも調べる以前に、「調べる必要はない」とか言っているはずですね。それに
「自分の名前がリストに載っていることにびびったからだと、あんたは考えているんだろう。でも、こいつが逃げ出したのが、本当にファイアウォールの一員だからだったとしたら?」
というセリフもありますから、もともとはファイアウォールは存在するという前提で動いていたわけです。だから「He’s got a theory」なんですね。
あとは男女がいる会話ですから、誰のセリフか分かりやすくすることも大切です。けっこう難しいよねえ。

第14回ウルトラショート翻訳課題 MVP

ということで、今回は8と26が良かったのですが、8番の田中仁美さんにMVPを差し上げます。26もかなり良かったです。

■第15回 ウルトラショート翻訳課題

<課題文>

今回の課題文はオススメの一冊でご紹介した『The Blue Nowhere』からです。

Think about the loner who used to return home from work and spend the night eating junk food and watching TV all night. Now, he turns on his computer and enters the Blue Nowhere, a place where he interacts — he has tactile stimulation on the keyboard, verbal exchanges, he’s challenged. He can’t be passive anymore. He has to provide input to get some response. He’s entered a higher level of existence and the reason is that machines have come to him. They speak his language.

For good or bad, machines now reflect human voices, spirits, hearts and goals.

For good or bad, they reflect human conscience, or the lack of conscience, too.

上の全文読んで訳してね。常体(だである調)で。最後の二行をお願いします。

それではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★