第16回 短編小説で鍛える翻訳力

一行翻訳コンテスト2008.08.16

■オススメの一冊
40年経った現在でも衰えない名作揃い

『The Penguin Book of English Short Stories』
(C. Dolley著、Penguin Putnam刊)

The Penguin Book of English Short Stories

では今月の一冊目。僕が大学に入った時(もう25年前!)に、授業で使ったテキストなのですが、いまだに印象が強いのが、The Penguin Book of English Short Storiesという本です。これは1967年に出た本ですから、もう40年経つんですね。すごいなあ。今ではペンギンからいろいろなこの手のオムニバスも出ているのですが、当時はEnglishとAmericanぐらいだったかなあ。(もう少しあったかも知れません。)さすがにペンギンだけあって、チャールズ・ディケンズ、トマス・ハーディ、ジョセフ・コンラッド、サマセット・モーム、D・H・ローレンスといった大家が並んでいます。この本で読んだ中から、コンラッドとかモームの長編を読むようになったと思います。「Heart of Darkness」とか面白かったですよ。文章自体はかなり読みにくいんですが。モームは大学のクラブ(英語サークルにいたのです)の勉強会の課題本でよく使われていました。(読みやすいから(^-^;)当時は週1冊読むのがノルマになっていて、えらくきつかったです。いまだに覚えているのが、美貌で知られた先輩が目の下にくまをつくって、「まだ読み終わっていない」とぶつぶつ言いながら、図書館に残りを読みに行ったことかな。振り返るとよくがんばったなあ(^-^;  閑話休題。短編小説は、短い分だけパンチが効いているのと、時間が断片的にしか取れない場合でも一編を最後まで読めるという意味で意外に有効だったりします。この手の文学でも構いませんが、Jeffrey Archerの「Twelve Red Herrings」とか、Stephen Kingの「Skelton Crew」といった短編集だったらかなり楽しめるんじゃないかなあ。このあたりもこれから少しずつご紹介していきます。ちなみに「English Short Stories」にはヴァージニア・ウルフが入っているんですが、初めて読んだ時にはまったく分からなかったです(号泣)。ウルフ読んで多少分かったような気になったのはもう40代になってからかなあ。ちなみに「ユリシーズ」は一生分からないだろうとあきらめていますが(苦笑)。

■今月のペーパーバック
大好評シリーズの第3作目
『Bannerman’s Law』
(John R. Maxim著、Bantam刊)

Bannerman's Law

次に今月の二冊目。John R. Maximの「Bannerman’s Law」をご紹介しましょう。ポール・バナーマン・シリーズはこれまでに5冊(4冊はペーパーバックのみ、1冊はハードカバーで最近10年ぶりの新作が出たところです。)本作はシリーズでいうと真ん中の3冊目にあたります。Bannerman’s Peopleと呼ばれる人たち、それはバーテンだったり、庭師だったり、司書だったりするわけですが、実は元秘密工作員の集団。バナーマンが、コネチカット州ウェストポートに引退したこの手の人たちが平和に暮らせるような場所を作っているという設定です。ですがやはりいろいろな事件に巻き込まれてしまうのがこの手の商売?の性。今回の物語では、女性暗殺者だったカーラ・ベネディクトの妹、リサが奇禍に巻き込まれてしまいます。西海岸の大学で映画を専攻しているリサは、サイレント映画からトーキーに移行した時期に、声が美しくないとか、訛りがあるという理由から解雇され、人生を狂わされてしまったサイレント映画時代の銀幕のヒーロー&ヒロインが収容されているというSur La Merという施設に忍び込み、そこで往年の名女優と知り合うのですが、Sur La Merには隠された秘密があり、捕らえられたリサは自白剤を打たれた上に、殺されてしまいます。さらにその死体は、Sur La Merとの関係を知られないよう、同時期に町を震撼させているシリアル・キラーの犯行に見せかけられて処分されるのです。しかし、妹の死に疑問を持ち復讐を誓ったカーラ、そしてカーラの暴走を止めようとするポールのグループは、次第に事件の奥深くへとはまっていきます。ポールの恋や、ぬれぎぬ?を着せられたシリアル・キラー本人も絡んで、事件は複雑な様相を呈していくのでした。いい感じでしょ? 書き出しがいいんですよ。

On a cool and perfect California morning, on the last day of her short life, Lisa Benedict parked her Fiero in a quiet residential area several streets away from the gate house of Sur La Mer.

これでもう読もうという気になっちゃいましたから。

今月はもう1冊ご紹介しちゃいます。というのは、先月、「The Blue Nowhere」読んだ後で、またJeffery Deaver読んじゃったんですよ(^-^;

お馴染み、Lincolnが大活躍!
『The Empty Chair』
(Jeffery Deaver著、Pocket刊)

The Empty Chair

「The Empty Chair」は、Lincoln Rhymeものの第3冊目。本拠地であるニューヨークを離れ、南部のある町へ手術を受けに行きます。前回もご紹介しましたが、Lincolnは、事故により四肢が麻痺しているため、少しでも状況を改善しようと、名医のもとへ、パートナーのAmelia Sachsと共にやってくるわけです。ところが、そのタナーズ・コーナーという土地では、The Insect Boyと呼ばれる殺人者で誘拐犯が跋扈しているのです。そして、副保安官が重傷を負い、看護婦それに学生が同時に誘拐されたことから、Lincolnに協力が要請されます。しかし、慣れない土地、厳しい自然、それぞれが何か含むところのあるように思える登場人物たち(The Insect Boyを執拗に付けねらう保安官の部下、慇懃無礼なローカル企業の社長など)という悪条件の中で、果たしてLincolnはThe Insect Boyを捕らえ、誘拐された人たちを無事に救い出すことができるのでしょうか? とにかく、次々と起こる意外な事件や、入れ替わり続ける善と悪など、実にスリリング。最後は1日で250ページ読んじゃいましたとほほ。ということで、このシリーズ、どれも面白いので良かったら読んでください。

■第15回 ウルトラショート翻訳課題の講評

<課題文>

Think about the loner who used to return home from work and spend the night eating junk food and watching TV all night. Now, he turns on his computer and enters the Blue Nowhere, a place where he interacts — he has tactile stimulation on the keyboard, verbal exchanges, he’s challenged. He can’t be passive anymore. He has to provide input to get some response. He’s entered a higher level of existence and the reason is that machines have come to him. They speak his language.

For good or bad, machines now reflect human voices, spirits, hearts and goals.

For good or bad, they reflect human conscience, or the lack of conscience, too.

 

<解説>

一応、全体をざっと見ておきましょう。「仕事から帰ってきて、ジャンクフードを食べ、一晩中テレビを見ていた孤独な(を好む)人物について考えてみよう。いま彼はコンピューターの電源を入れ、電脳世界に入る。それは彼が交流する場である。彼はキーボード上で触覚的な刺激を得、言葉を交わし、その能力を試される。もはや受け身ではいられない。何らかの応答を得るためには、インプットを与えなければならない。この人物はより高い存在の次元へと上ったのだが、その理由はコンピューターが彼のもとを訪れたからである。コンピューターは彼の言葉を話すのだ。」くらいかな。荒っぽいですが。せっかくなので、tactile=触覚の(contactと同じでtactはtouchという意味)とかついでに覚えておきましょう。

これを頭に置いて、課題文を見ていきましょう。machineというのは機械という意味でも使いますが、コンピューターの世界では、コンピューターのことをmachineと呼びます。上の文脈がなければ、機械という一般論にしてもいいんでしょうが、これはやっぱりコンピューターが正解。二行目で良心の話もでてくるんですが、ベルトコンベアとかに良心はないよねえ。言っていることは、次のように考えるとわかるかな。ついでにheartとかmindとかspiritを整理しておきましょう。このあたりはすごくわかりにくいです。mindというのは人間の「精神」なんですが、知情意(人間の精神活動の中に含まれている、知性・感情・意志の三つの要素<大辞林より)の働きをする部分です。heartというのは情的な働きを意味し、spiritは、soulと同じような意味ですが、肉体や物質の反語という感じかな。ですから、human voices=上地やしょこたんのブログ、spirits=政府からの弾圧に負けずに正論を語るウェブサイト、hearts=オリンピックで反町ジャパンが負けたあとの2ちゃんの書込、goals = このウェブサイト(笑)という具合かなあ。少し違うかなあ。訳語自体としては、それぞれ、意見・声、精神、心、目標・目的という感じでいいと思います。「For good or bad」は、「良いにせよ、悪いにせよ」くらいの意味。nowという単語は、「今は~である」という風に訳すよりも「~になった」という風に訳した方がぴったりくることが意外に多いですから覚えておきましょう。「ともかくも」とかでもいいです。従って一行目は「良いにせよ、悪いにせよ、今やコンピューターは、人の意見、精神、心、そして目的を反映する。」

二行目は、冒頭は良いとして、conscience=良心、lack of conscience=良心の欠如・欠落です。「For good or bad…reflect」が同じ形ですから、そこは揃えた方がいいでしょう。「良いにせよ、悪いにせよ、コンピューターは、人の良心、または良心の欠如も反映する。」といった感じでしょうか。

もう少し大胆にやると、「コンピューターは~の鏡である。」という手があります。(試訳参照)

1.
幸か不幸か、コンピュータは今や、人間の声や気分、関心や目的を反映する。
幸か不幸か、コンピュータは人間の誠実さ、不誠実さも反映する。

(*誠実さというとsincerityとかを考えちゃいます。あと「or the lack of…」のところがポイントなので、そこはきちんと訳出したいと思うんですね。sincerity or insincerityとかだったらいいんだけど。)

2.
良きにつけ、悪しきにつけ、機械は今では、人間の声、精神、心や目標を映し出す。
良きにつけ、悪しきにつけ、機械は人間の良心、または良心の欠如も映し出す。

(*訳文としてはほぼOKですが、機械はコンピューターにして欲しかったなあ。あと、上と下を揃える上で、読点の位置も意識すると良かったかな。)

3.
幸か不幸か、今やコンピューターは、人々の声、精神、感情、目的を映しだしているのだ。
幸か不幸かコンピューターは、人々の良心、あるいはその欠如をも映しだしているのだ。

(*訳文としては悪くないのですが「~いるのだ」を二度繰り返すとちょっと断定的に響きすぎて、しつこく感じられると思います。humanを人々としたのはいいですね。)

4.
善かれ悪しかれ、今や機械は人間の希望や精神、感情や目的をはっきりと理解する。
ともかくも、機械は人間的な良心、あるいは良心の欠如も示すようになるのである。

(*機械はコンピューターに。voicesは希望というとちょっと違うかな。reflectというのはここでは「反映する」という意味で、「理解」は違うと思います。あと、上と下は対になっているので、そこはきちんと出した方がいいと思います。)

5.
何といっても、今や機械は人間の代弁者だ。
良くも悪くも、人の善悪さえも映し出す鏡なのだ。

(*機械はコンピューターに。鏡とか代弁者というアイデアはすごくいいですが、さすがに元にある名詞がまったくなくなっているのはやりすぎ。)

6.
良くも悪くも、コンピュータはいまや人間の声も精神も、心も目標も映し出している。
良くも悪くも、人間の良心を、あるいは良心の呵責のなさまでも映し出しているのである。

(*「も」が多すぎるかなあ。あと「良心の呵責のなさ」はちょっと冗漫に響きます。ここはシンプルに「欠如」や「欠落」で。)

7.
良くも悪くも、機械はすぐに人間の声、精神、心や目的を映す。
同様に良くも悪くも、これらは人間の自制心や、その不足を映す。

(*機械>コンピューターで。「すぐに」という意味ではないです。「~ようになった」という意味。「同様に」はここでは足さない方がいいかな。「自制心」ではないですね。2ちゃんねるの一部の発言、もっといえばシリアル・キラーのウェブサイトとかを考えれば意味分かるはず。)

8.
善悪は別にして、今この瞬間、マシンが人間の声、精神、心、目的を映し出している。
そしてまた善悪に関係なく、人間の良心を、あるいは良心がないことまでをも映し出す。

(*原意から離れすぎ。このnowは、コンピューター(や電脳世界)の進化によって、コンピューターが人間の鏡になったという意味なので、ここで「この瞬間」だけ足すとそっちの方が強調されちゃいますよ。)

9.
良くも悪くも、機械は今や人間の声、精神、心と目的を映し出す。
良くも悪くも、それらは人間の良心や、良心の欠如をも映し出す。

(*機械はコンピューターに。「それら」みたいな「こそあど」言葉はなるべくうまく消さないと日本語としてとてもぎくしゃくした感じになります。せっかく上下揃えているから、そこまで徹底した方がよかったんじゃないかなあ。)

10.
よかろうが、悪かろうが、今の機械と言うものは、人間の声、精神、血の通った心、そして、目指すところを見せてくれる。
よかろうが悪かろうが、そんなものが、人間の意識、意識の欠如へ繋がっていくのである。

(*機械はコンピューターに。工夫は感じられるんですが、並んでいる名詞の間のバランスがあまり良くないかなあ。あとやはり、同じ「reflect」という動詞が使われているから、これは訳し変えちゃうと原文のニュアンス消えるよね。)

11.
善くも悪くも、今の機械は人間の声、魂、目的に影響される。
良くも悪くも、それらは良心の良し悪しまでも映しだす。

(*うーん、これも工夫は感じられるんだけど、やっぱりreflectは同じ表現にした方がいいと思います。「それら」も避けたい。あと、やっぱり「影響される」というよりは「反映される」だろうなあ。もう少し細かなニュアンスに注意を払って。)

12.
良かれ悪しかれ、今やマシンは、人間の声や精神、感情、目的を反映する。
良かれ悪しかれ、マシンは人間の良心、またはその欠如すらも反映するのだ。

(*けっこう好きかも。マシンはコンピューターとはっきり出してもらっても良かったと思いますが。)

13.
良くも悪くも、コンピューターは人間の声、精神、心、そして目的を映し出す。
そしてまた、良くも悪くも人間の良心もしくはその欠如をも映し出すのである。

(*これも好みかな。「そしてまた」を代名詞の代わりに入れるというのは良いアイデアだと思います。「もしくは」の前に読点を置くともっと締まると思うよ。)

14.
良い悪いは抜きにして、機械には人間の音声、思考、感情、意向が反映されるのが常である。
人間の道徳観や利己心といったものもまた同様だ。

(*機械はコンピューターに。「常である」ということはいつもそうだったというニュアンスになっちゃうからここでは使えないです。そもそもよく考えたらそんなことはないってわかるし。意訳というのは、原文をきちんと把握した上で行うべきです。)

15.
良い悪いは別として、今や機械は人間の意見、精神、心、それに目標を映し出している。
良い悪いは別として、機械は人間の良心、そして良心の不在をも映し出しているのだ。

(*機械はコンピューターに。それ以外はとてもいい感じです。惜しいなあ。)

16.
幸か不幸か、コンピュータは今日、人間の声や精神、感情、目的を反映するのである。
道徳心でさえもだ。

(*一行目はまあOKなんですけど、二行目ははしょりすぎ。これはミステリーで「良心」だけでなく「良心の欠落」(つまりシリアル・キラーとか)も反映しちゃうよという意味だから、二行目をちゃんと訳さないと意味がないんです。)

17.
よかれあしかれ、コンピューターはもう、人間の声や精神や心情や目的を映し出すものになっている。
よかれあしかれ、コンピューターは、人間の良心や良心の欠如を映し出すものにもなっている。

(*意味はきちんと取れていますし、きちんと対に訳してもあるんですが、ちょっとパンチに欠けるかなあ。たぶん「よかれあしかれ」をひらがなにしちゃったのがちょっと失敗かも。もう一工夫できるようになればとても読み応えのある訳文になると思うよ。)

18.
善かれ悪しかれ、いまや、人の意見や気分や思いや目標は、機械を通じて語られるのだ。
だから、善かれ悪しかれ、人の良心や良心の欠如も、機械に表れるのだ。

(*機械はコンピューターに。「機械を通じて語られる」としてしまうと、それ以外では語られないことになっちゃいますね。ここではそこまでは言っていないと思います。「語られる」「表れる」という対はちょっと違っているかなあ。)

19.
良いにつけ、悪いにつけ、パソコンは今や人間の声、精神、心、はたまた、ゴールまで反映しているのだ。
良いにつけ、悪いにつけ、パソコンは人間の意識あるいは意識の欠如を反映しているのだ。

(*パソコンというのはコンピュータの世界でもすごく限定的なのね。でもこの小説はハッカーとかクラッカーが出てくる話だから、パソコンだけがメインではないので、ここではコンピューター以上に絞り込むとだめです。あと「はたまた」はちょっと他の硬い言葉に比べてやたらと浮いている感じがします。)

20.
良くも悪くも、機械は、口調や気分、心中、目的をそのまま映し出す。
良心も伝えるが、良心の無さも同様に伝えるのだ。

(*機械はコンピューターに。voicesはここでは意見とかです。二番目のfor good or badも訳出して欲しかったなあ。ちょっと訳文がぶっきらぼうです。もうちょっと工夫しましょうね。)

21.
良くも悪くも、機械は今や人の声、魂、心や目的を写し出す。
良くも悪くも、機械は人の良心、あるいはその欠如さえも写し出す。

(*機械はコンピューターに。「写す」は「絵・文字などをまねて、そのままにかき表す」とか「形・色あるいは気分・様子などを、絵や文章に、そのままかき表す」といった方の意味になっちゃうので、ここでは「映し出す」を。読点の打ち方にもう一工夫するともっときれいになりますね。)

22.
良かれあしかれ、いまやコンピューターは人の声を理解し、その考えや気持ち、意図を汲み取って動く。
そして幸か不幸か、人が何かを意識すればそれを反映するし、何かを意識しなかったとすれば、それもまた反映して動くのだ。

(*うーん、考えすぎ。意味違っちゃっているし。特に二行目は筆者が伝えたい意味とまったく違ってしまっているので、これはかなりやりすぎ。もっと原意をよく考えないと。「conscience」と「consciousness」は意味全然違うよう。)

23.
良くも悪くも、機械は今や人間の声や精神、心や目標を映し出す。
良くも悪くも、機械は人間の良心を映し出し、さらにまた良心の欠如をも映し出す。

(*機械はコンピューターに。それ以外はいい感じですね。ただ二行目の終わり方にもう一工夫あった方がいいかも。)

24.
幸か不幸か・・・今やマシンは人の声、精神、心、そして目標(夢)を映し出す。
幸か不幸か・・・ヤツらは人の心の良し悪しまでをも映し出す。

(*うーん、(夢)は文芸だとアウトかな。「ヤツら」という訳し方だとそこに価値判断が入っちゃうよね。conscienceは良し悪しではないんですよ。そういえば昔、キカイダーに良心回路って出てきたなあ。)

25.
良かれ悪しかれ、マシンは今では人間の声、心、感情、意志に反応する。
良かれ悪しかれ、彼らは人間の良心、そして悪意にも反応する。

(*反応だと「response」とか「reaction」になっちゃうね。そうじゃなくて、反映、鏡なんですよ。)

26.
幸か不幸か、現代においてコンピュータは人間の声も、魂も、心も、そして人生の目的も映し出す。
幸か不幸か、コンピュータは人間の良心を、はたまた良心の欠如をも映し出す。

(*「人生の」目的とは限らないです。「はたまた」はちょっと浮いているような。普通に「あるいは」とかでいいんじゃないかと。)

27.
良くも悪くも今では、機械は人の声、気分、感情、目的を反映する。
良くも悪くも今では、機械は人の道徳心、もしくはその欠如も反映するのだ。

(*機械はコンピューターに。下の方は「今では」はないよねえ。「道徳心」は意味としては、合っているんですけど、この文脈だと良心の方が座りが良さそうですね。「欠如もまた」とかすると落ち着くかな。)

28.
幸か不幸か、人は機械に向かって内なる声を発し、心を映し出すことで満足するようになったのである。
幸か不幸か、機械は人の善意や悪意さえも代弁する道具なのである。

(*機械はコンピューターに。ええと、原文の意味を無視しすぎです。原文をもっときちんと読んでください。「発する」とか「満足する」とかは一言も書いてないですよう。翻訳は自分の思ったことを書くんじゃなくて、作者の伝えたいことを伝えるんですよ。)

29.
良いのか悪いのか、機械は今、人の声、精神、心そして目的に応えてくれる。
良いのか悪いのか、機械は人の良心にも邪心にも応えるのである。

(*機械はコンピューターに。うーん「応える」というのは応答する・反応するっていう意味ですよねえ。respondではないですよう。)

30.
良くも悪くも、今や機械は、人間の声、魂、心、目的を映し出す。
良くも悪くも、機械は人間の良心、もしくは良心の欠落をも映し出す。

(*機械はコンピューターに。さらっと訳されていていい感じです。)

31.
良きにつけ悪しきにつけ、今や機械は人間のことばや感情、精神や目標を映し出す鏡になっている。
良きにつけ悪しきにつけ、機械は人間の良心ばかりか、良心の欠如をも映し出すのだ。

(*機械はコンピューターにしてあればとても良かったんですが。「人間のことば」というのはなかなか良い訳だと思いました。全体にこれも良い感じです。)

32.
良かれ悪しかれ、今では機械は人間の声を、精神を、心を、そして目標を反映する。
良かれ悪しかれ、それらは人間の良心、もしくは良心の欠如をも映し出すのだ。

(*機械はコンピューターに。やはり「こそあど」言葉は避けたいですね。何か硬い感じになっちゃうんですね。これな小説なので。)

33.
よくも悪くも、機械は今や人間の声や精神状態、心の内や目的を反映する。
よくも悪くも、人間が意識していること、していないことまでも反映する。

(*機械はコンピューターに。うーん、一行目はいい感じなのに、consciousとconscience読み間違えちゃいましたね。もったいない。)

34.
幸か不幸か、機械は今や、人間の声を、精神を、感情を、目的を、鏡のように映し出す。
そして人の良心を、あるいは良心の不在をもまた、映し出しているのだ。

(*機械はコンピューターに。ああ、これはかなりいい感じだなあ。機械がコンピューターになっていたらMVPだったです。惜しい! )

35.
良かれ悪しかれ、今やコンピュータは人間の声に始まり、その精神・心そして目標を反映したものになっている。
良かれ悪しかれ、コンピューターは人間の良心を反映し、もしくは同時にその良心の不足状態をも反映しているのである。

(*うーん、「人間の声に始まり」はちょっとひっかかるかなあ。あと「反映」を3回というのもちょっとくどいです。それから「良心の不足状態」というのはやっぱり違和感がありますね。)

36.
良くも悪くも、今や機械は人間の声や気分、心、そして目的を反映する。
良くも悪くも、機械は人間の良心、またはそれが欠如していることも映し出すのだ。

(*機械はコンピューターに。全体には悪くない流れです。ただこうするのだったら「声」はもう一工夫してもいいかもねえ。)

37.
良い意味でも悪い意味でも、今日の機械は、それを使う人の声や精神、心、使われる目的を反映している。
機械は、人間の良心を反映しているものと、中には間違った考え方を反映しているものもある。

(*機械はコンピューターに。「使われる」というのはどこから出てきたんだろう。それから二行目はちょっと意味が違ってしまっていますね。)

38.
よかれ悪しかれ、今ではコンピュータは人間の肉声、精神、感情、そして目的をあらわにする。
よかれ悪しかれ、人間の良心、あるいはその欠如をもあらわにしてしまうのだ。

(*「あらわ」だとrevealという気がします。肉声はあらわにならないんじゃないかなあ。「マイクロフォンなどの機械を通さない、人間の口から出る生(なま)の音声。」(広辞苑)名詞と動詞の組み合わせってけっこう注意が必要です。)

<試訳>

良くも悪しくも、コンピューターは、人の意見、精神、心情、そして目的を映し出す鏡である。

良くも悪しくも、コンピューターは、人の良心、あるいはその欠如を映し出す鏡でもある。

<講評>

今回は、まずmachinesをコンピュータ(ー)またはマシンと訳しているかどうかでふるいにかけました。機械が「人間の精神を反映する」ってよく考えるとおかしいでしょ。けっこう単純に機械と訳している人が多かったんですが、the blue nowhere、電脳世界の話ですから、やっぱり機械だと意味が合わないんですね。コンピューターの世界ではmachineはマシンとかコンピューターという意味で使われます。注意してくださいね。

第15回ウルトラショート翻訳課題 MVP

ということで、上を考慮すると13番の佐藤麻衣子さんのが一番良かったかな。機械というフィルターをはずしたら、34さんがとても良かったです。もったいないなあ。

■第16回 ウルトラショート翻訳課題

ということで、今回は引用したあれ。

<課題文>

On a cool and perfect California morning, on the last day of her short life, Lisa Benedict parked her Fiero in a quiet residential area several streets away from the gate house of Sur La Mer.

常体(だである調)で。小説の書き出しだから、一発で読みたくなるような感じでよろしく~。それではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★