第28回 この夏の思い出

一行翻訳コンテスト2009.09.16

■オススメの一冊
中学時代に夢中になったSF小説
『Foundation』
(Isaac Asimov著、Spectra)

Foundation

では今月の本からいってみましょう。まず1冊目は、アイザック・アシモフの「Foundation」。今は電撃文庫とか角川スニーカー文庫系のヤングアダルトをのぞいて、SFはあまり読まなくなってしまった僕ですが、中学生の頃は夢中で読んだものです。最初は海外ではお約束のウェルズ(「透明人間」や「宇宙戦争」)やジュール・ヴェルヌ(「地底探検」や「八十日間世界一周」)、国内では海野十三とかから読み始めて、すぐにアーサー・C・クラーク、エドモンド・ハミルトン、ロバート・ハインラインといった作家にはまっていきました。一番好きだったのは、ヴァン・ヴォートで、特に「非Aの世界」がお気に入りでしたが、入手困難なので、ここでは簡単に入手できる「ファウンデーション」シリーズの第一作、「Foundation」をご紹介しておきます。僕が読み始めた頃には「銀河帝国の興亡」というタイトルで、3巻しか出ていませんでしたが、後に続編が数多く書かれています。(でもそっちは読んでいません。老後の楽しみ。)僕は、創元推理文庫版を読んだのですが、早川派は「銀河帝国興亡史」のタイトルが僕らの世代ではしっくりくると思います。今ではファウンデーションという名前の方がむしろ通りが良いんでしょう。ストーリーは、1万年を超える歴史を持つ銀河帝国が次第に崩壊に向かう中、天才数学者、ハリ・セルダンがその崩壊を予測して、人類の英知を記録し、暗黒時代の後に来るべき第二帝国の礎となるファウンデーションを作るといった話。いろいろなSF映画の底流となっているネタの宝庫でもあります。内容は実際に読んでいただくとして(途中からミステリー的な要素が入ってきます)、この小説はところどころに銀河百科辞典(Encyclopedia Galactica)第116版からの引用というかたちで、いろいろな解説が挿入されています。実はこれがきっかけで、辞書とか百科事典に興味を持つようになったんですね。懐かしいなあ。たとえば、

HARI SELDON…born in the 11,988th year of the Galactic Era: died 12,069. The dates are more commonly given in terms of the current Foundational Era as -79 to the year 1F.E. Born to middle-class parents on Helicon, Arcturus sector (where his father, in a legend of doubtful authenticity, was a tobacco grower in the hydroponic plants of the planet), he early showed amazing ability in mathematics. Anecdotes concerning his ability are innumerable, and some are contradictory. At the age of two, he is said to have…

が冒頭。よろしかったら読んでみてください。

■今月のペーパーバック
幽霊がテーマの短編集
『Roald Dahl’s Book of Ghost Stories』
(Roald Dahl著、Farrar Straus & Giroux (J))

Foundation

今月の二冊目は、短編集。「Roald Dahl’s Book of Ghost Stories」。Introductionを読むと、ダールのところに幽霊ものだけを取り上げたTVシリーズのために、原作を選定するように依頼されたダールが、読んだ749作から選んだ「怖い幽霊譚」を集めたものです。「Spookiness is the real purpose of the ghost story. It should give you the creeps and disturb your thoughts.」とあります。いろいろな国の作家が含まれていますが、古い作品もあるので、いささか取っつきにくいかも知れません。個人的にはE・F・ベンスンやシェリダン・レ・ファニュはとても好きな作家です。僕が怪奇小説にはまったのは、創元推理文庫から出ていた平井呈一の怪奇小説傑作集全5巻に収録されていた、ラヴクラフトの「ダンウィッチの怪」を読んでからです。余談になりますが、当時の翻訳のタイトルはとても魅力的に感じられました。たとえば、At the Mountains of Madnessは、「狂気の山にて」、The Colour Out of Spaceは「異次元の色彩」が、今では「狂気山脈」と「宇宙からの色」。確かに原文には忠実かも知れないんですけど、趣ないなあと思ってます。(これは個人的な好みの問題だとは思うんですが。)これは映画もそうです。今はすっかりカタカナ中心になってしまいましたが。「旅愁」とか「大いなる西部」とか、なんかいい感じ。原題はSeptember AffairとThe Big Country。原題以上に邦題が光ります。。ここではレ・ファニュの「The Ghost of a Hand」の冒頭部分をご紹介しておきます。

Miss Rebecca Chattesworth, in a letter dated late in the autumn of 1753, gives a minute and curious relation of occurrences in the Tiled House, which, it is plain, although at starting she protests against all such fooleries, she has heard with a peculiar sort of particularity.

ああ、何ともいい感じ。それでは今月の課題に取りかかりましょう。

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