第29回 最近の出来事

一行翻訳コンテスト2009.10.16

■オススメの一冊
ちょっとしたユーモアも楽しめる経済本
『The Logic of Life: The Rational Economics of an Irrational World』
(Tim Harford著、Random House)

The Logic of Life: The Rational Economics of an Irrational World

まず一冊目は、Tim Harford の「The Logic of Life: The Rational Economics of an Irrational World」。著者はFinancial Timesの編集者で、「The Undercover Economist」というコラムを書いています。もともとはシェル、世銀で働いたり、オックスフォード大学で教えたりしていたようです。僕は専門は経済ではないんですが、最近やっている仕事が、社内報とか四季報とかCSR報告書といった、経済・経営といった分野の表現がどうしても必要になるジャンル中心なので、主に表現を探す・磨くためにぱらぱらと経済書を読むことも少なくないです。本当はじっくりと腰を据えて勉強するのが一番なんですが、時間が限られているので、どうしてもつまみ食いみたいになっちゃうんですね。余談になりますが、昔、ある保険会社の保険外交員マニュアルを訳したことがあるのですが、その時に保険というジャンルの辞書が意外にないことに気づきました。対訳集などはあったんですが、中身が不十分。それで、アメリカのリスク管理と保険の教科書を取り寄せて、用語を拾い集めたことがあります。いまはネットがあるので、そういう苦労もずっと少なくなったでしょうが、何せ僕が初めて買ったPowerMac 6100というのは60MHz、250MB、8MB+4MBで32万という代物。それまではワープロで仕事してましたからねえ。いまは2GHz、300GB、2GBだもんねえ。時代が違う……。それはさておき、当時は紙の辞書が中心でしたから、はっと気づくと机の周りが辞書と資料に取り囲まれて身動き取れなくなったりとかありましたねえ。はあ。でも、自分で用語集を作ったというのは実はすごくためになりました。読むだけと、実際に自分の手で打つのではやっぱり吸収が違うんですね。ですから、何でもやるとまでは必要ありませんが、自分の専門分野について、紙の事典をデータ化してみるとか、いろいろ工夫を重ねてみてください。で、このThe Logic of Lifeですが、ちょっとしたユーモアを楽しみながらも、しっかりいまの経済について一つの見方を得ることができる本です。少しだけ引用。

It’s hard to say where the check-in line ends and the casino crowds begin. The bars, restaurants, and public spaces of the hotel lobby seem to ooze into the gambling floors. Even in the quiet midmorning hours, as the guests sleep off the nights’s excesses or enjoy breakfast, the hotel’s lobby boasts a bewildering array of flashing lights and garish displays. Elderly gamblers in the middle-American uniform of baseball caps, slack khaki shorts, and bulging T-shirts sit and feed quaters into the maw of the nearest slot machines. Sometimes, the machines form a cocooning embrace as the seniors ride them like motorized wheelchairs. Occasionally –just often enough — the machines vomit coins into the laps of their riders.

こんな感じの観察から、経済の話に入っていきます。続きは本で読んでね。

■今月のペーパーバック
さまざまな歴史が絡んだミステリー
『Hangman』
(Michael Slade著、Signet)

Hangman

次は2冊目。別の本を読もうと思っていたのに、この間、洋書箱(未読の洋書が詰まっているとても恐ろしい山積みになった箱。たぶん数百冊はあると思われる)を片付けていたら、ついMichael Sladeの「Hangman」を拾ってしまって、そのままドツボに。ということで、今回は(も)、このミステリー+ホラー作家の作品を。マイケル・スレイドは、実際はジェイ&レベッカ・クラークの親娘による共作です。2000年の作品で、もう10年前に出たんですね。この本は、買った当時に途中まで読んで、放置してあったんですが、今回読んでみて気づいたこと。前より英語が分かる(笑)。やはり継続は力なりで、十年分の蓄積というのは本当に大きいです。語彙もそうですが、やっぱり読んだ量だけ、訳した量だけうまくなるというのを実感しました。ストーリーは、バンクーバーとシアトルで首つりによる連続殺人が起こり、その犯人を捜すという内容ですが、この作家の特徴として、各作品ごとに、様々な歴史を絡めてくるのと、リアルな描写が出てくるというのがあります。で、十年前に読んだ時には、気持ち悪くなかったのが、いま読むと気持ち悪いんですね(^-^;  はっきり言って、スプラッターがスプラッターに読めるというか(^-^;  内容はまあ入手できれば読んでもらうということで、これは課題文になるんですが、たぶん頭痛くなりますよ。(このシリーズについては、http://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/book/special-x.htmlがうまくまとめています。でもHangmanは出てません。)

最初に背景を説明しておくと、バンクーバーの男性刑事とシアトルの女性刑事の会話です。男性刑事はSpecial Xという特殊な部門に属しています。そこでSpecial Xとは何かという話をきかれて説明するというだけの話なんですが、これをどう訳すかがある意味とても難しい。

“What does the X stand for?”
“External,” responded Zinc. “The Special External Section of the Mounted Police investigates cases with links outside Canada. Because we also hunt the psychos, some say the X stands for Extreme.”

こういうのって本当に悩むのですわ。

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