第30回 古典作品の魅力

一行翻訳コンテスト2009.11.16

■オススメの一冊
’50年代の古典サスペンス
『Last Seen Wearing』
(Hillary Waugh著、Pan Books刊)

Last Seen Wearing

Hillary Waughの「Last Seen Wearing」を読んでいました。邦題は「失踪当時の服装は」。残念ながら、いまは絶版になっていますが、もともと僕は小学生の頃からミステリーが大好きで、途中から特に創元推理文庫を読むようになりました。いまはもう残っていませんが、家の手伝いをしては小銭を貯めて、近所の古本屋で少しずつ集めていったのを覚えています。(当時はエラリー・クイーンの国名シリーズで定価200円くらい。古本で120円くらいでした。庭の掃除をしたり、店の手伝いをすると10円お小遣いがもらえたので、それを何日かかけて貯める感じですね。)いまでもそうなのですが、一番好きなのは、やはり本格ミステリーで、ヴァン・ダイン、エラリー・クイーン、クロフツなどを夢中で読みました。特に気に入っていたのがジョン・ディクスン・カーで、こちらは古本や再刊を洋書でこつこつ集めて箱に詰めてあります。老後の楽しみですね。本格物も冊数には限界がありますから、今度はサスペンス・スリラーとかだんだん範囲が広がっていきます。(中学頃にホラーやSFにはまっていくわけです。)当時(’60年代ですから(^-^;)は、まだ今のようなホラーなハンニバルもの、あるいは丹念に描かれたハリー・ボッシュ・シリーズ(おすすめ)みたいな話は存在せず、警察ものといっても、このヒラリー・ウォーのような書き込みがソフトな作品が多かったように思います。ストーリー自体はシンプルと言えばシンプルで、女子寮の生徒がある日突然姿を消します。最初は遊びに行っているのかなくらいのノリでいるのが夜になっても帰ってこない。寮母がやがて警察に連絡し、主人公であるフォードが登場します。この女生徒はどこに行ってしまったのでしょうか。淡々と始まる物語はやがて加速し、スリリングに展開していきます。何しろ1952年の作品ですから、まず英語自体も、言葉遣いもきれいです。四文字言葉など出てきません。だいたい会話からしてこんな感じ。

Peggy said, ‘She doesn’t have a boyfriend.’
‘Ridiculous. You mean she never has a date?’
‘She has a quite a few dates, but not with any special boy.’
Marlene said, ‘She had a couple of dates with a sophomore at Yale. He didn’t invite her to the prom though, and that might have something to do with it.’

何か、戦前の映画みたいだ(^-^;

この手のクラシック作品って、注意して書店やamazonをチェックしていると、時々ぽろっと再刊・復刻されて、またあっという間に姿を消してしまうんですよねえ。特に古典と呼ばれる作品はそう。でもその分なんかほのぼのとした気分になれるので、ぜひいろいろ探して読んでみてください。クイーンだと「エジプト十字架の謎」が来年復刻になるみたいよ。

■今月のペーパーバック
Brian Keeneの最新作
『Urban Gothic』
(Brian Keene著、Leisure Books刊)

Urban Gothic

次に2冊目。Brian Keeneの新作が出たから買っちゃったよん。「Urban Gothic」は、最新作なんですが、ちょっと期待はずれだったなあ。若者6人の乗った車が、誤ってフィラデルフィアの貧民窟というか危険地帯に入り込んでしまい、そこでエンストしてしまいます。住民の若者グループに襲われると思い込んだ若者たちは、近くの廃墟に逃げ込みますが、そこは住民たちも近寄らない家で、そこには不良少年よりももっと恐ろしいモノが住んでいて……。というまあホラーではお約束のパターンの作品です。どうも最近流行のホラー映画、「ディセント」とかのネタに近いんですけど(いや、ワタクシは筋しか知りませんが)、何かちょっと初期の冴えが薄れてきているような気がするわけです。グループがいて、その中にアホなキャラがいて、それがドジを踏むおかげで、全員が迷惑するというパターンなんだけど、今ひとつなんだよねえ。ただ文章自体は相変わらずうまいんですが、上のHillary Waughから60年、英語はこんなになったという例として対比をお楽しみください(笑)。

But he’s right, Kerri thought, gazing out of the passenger window. Javier is right. There’s no rhyme or reason to it. Sometimes, events just spin out beyond our control. Sometimes, no matter how careful we are, no matter how much we try sticking to the script or routine, our day gets off track, and nothing we say or do will fix it before night comes around. Shit happens. And when it does, things get fucked up.

それでは今月もコメント行ってみましょう。

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