第65回 翻訳者も教養を豊かに――Google入社試験本を紹介

1.
多くの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたか分かっている。実際、子どものとき、私たちは容赦なくそれを見つけようとしたが、両親は取り合わなかった。私たちは思いつく限りのあらゆる方法で尋ねたり、それを聞き出すために嘆願さえしてみた。だが、私たちが引き出せた唯一の情報は、わずか5分の時間差であったことと、それはさして重要ではなかったということであった。

<コメント> 一行目微妙にさらっと流れてこないんですね。そういう時は数に関わる部分を後ろに回す。「一卵性双生児の多くは……生まれたのかを知っている」とか。「容赦なくそれを見つけよう」は意味が分かりにくいです。もう少し自然な日本語を心がけてみてください。

2.
多くの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたか知っている。事実、子供の時に我々はしつこくそれを知ろうと試みたが、親は答えなかった。我々は思いつくかぎりの方法で聞いた。教えてほしいと、すがりつきさえした。やっと聞き出せたことは、5分違いで生まれたということだけだった。それはたいした問題ではなかった。

<コメント>「それを知ろう」はちょっと避けたいかな。どうしても「こそあど」言葉を使ってしまいがちなんですが、それを減らすとずっと文章が引き締まります。「すがりつく」はちょっと大げさかな。that節は並列なので注意。
<余談> 百聞は一見にしかずと言いますが、やっぱり実際に行ってみないと分からないものですね。

3.
たいていの一卵性の双子は、どちらが先に生まれたか知っている。実際僕らも、子どもの頃はしつこく突き止めようとしたものだ。でも、両親は答えなかった。僕らはありとあらゆる方法で尋ね、懇願までした。けれど唯一聞けたことといったら、僕らが生まれてきた時間差はたった5分だったってことだーそれは、どうでもいいことだった。

<コメント> 惜しいなあ。「たずね、懇願までした」は少し硬いかな。あとthat it really didn’t matterはその前のthatと並列だからそこはきっちりと。

4.
たいていの場合、一卵性双生児といえば、自分たちのどちらが先に生まれたのか知っているものだ。実際わたしたちも、小さい頃はそれが知りたくて、両親にずいぶんとしつこくしたものだ。しかし、教えてもらえなかった。考えつくありとあらゆる方法で頼み、ついには拝み倒しまでした。だが、引き出せた唯一の情報といえば、生まれたときの時間差はたったの5分であり、それは所詮問題にならないほどの差でしかない、ということだけだった。

<コメント>やや硬い(漢字が多い)のが気になりますが、訳文としてはうまくまとめたなという印象です。「しょせん」とかは開くか「いずれにせよ」のように別の表現に変えるか。
<余談> 「適当に」というのは良くないと思います。対象の訳文ごとに、自分なりのルールを決めてやらないと、説得力のある訳文は生まれないんですね。

5.
大抵の一卵双生児はどちらが先に生まれたかを知っている。実際、子供の立場として、このことを容赦なく知ろうとした。ところが両親は、これを拒んだ。考えられるあらゆる方法で、両親から聞き出そうとし、教えてくれるよう、両親に嘆願さえした。だが、両親から引き出すことができたことは、ただ生まれた時間の差がたった五分であり、そしてそんなことはどうでもよい、ということだった。

<コメント>「たいてい」は開きましょう。「容赦なく知ろう」はちょっとぴんと来ないかな。全体に文章がぶつぶつと切れている感じがするんですね。もっと流れが生まれるようにさらっと訳してみましょう。

6.
一卵性双生児の兄弟なら、たいていはどっちが先に生まれたのかを知っている。そういうぼくらも、子どものころはなんとかして本当のことを突き止めようと食い下がったものだが、両親は頑として話してくれなかった。思いつくことはなんだって聞いたし、お願いだから教えてよと泣きついたことさえあった。けれど、両親から聞き出せたのは、ぼくらがたった5分違いで生まれてきたこと、そして、そんなこと、べつに大した違いじゃないということだけだった。

<コメント>ああ、これはなかなかうまくまとめましたね。「聞く」が繰り返しになっているのがちょっと気になるかな。
<余談> 色気は結局のところ、経験を重ねてうまくなるものなんでしょうね。

7.
たいていの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたか知っているものだ。実際、子供の頃の私たちはそれが知りたくてたまらず、しつこく突きとめようとしたが、両親は決して明かしてはくれなかった。私たちは思いつく限りのやり方で質問した。時には涙ながらに教えてほしいと訴えたほどだ。それでも、私たちが引き出せたたったひとつの情報といえば、出生の時間差が5分しかなかったということだけだった。こんなものは私たちにとってはどうでもよかった。

<コメント>前半の流れはなかなか良いですが「涙ながら」は少し大げさかな。「引き出せた、たった」の方が読みやすいですね。thatが並列になっているから、たった一つではないかな。

8.
一卵性の双子は、大抵どちらが先に生まれたか知っている。そういえば、子供の頃、二人でしつこく両親の口を開かせようとしたが、うまくいかなかった。思いつくあらゆる方法で尋ね、教えてと泣き付きさえした。結局、聞き出せたのは、二人はたった5分差で生まれ、そんなことにこだわるのは実にくだらない、ということだけだった。

<コメント>「たいてい」は開きましょう。「教えてと泣きついたこともある」くらいで。「くだらない」までいってしまうと少し行き過ぎかな。
<余談> そういうのは調べてみると楽しいですよ。

9.
ほとんどの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたのかを知っている。じっさい僕たちも子どものころに何とか聞き出そうとしたけど、両親は頑として教えてくれなかった。思いつく限りのやり方で聞いてみたし、教えて欲しいと泣きつきさえした。それでも聞き出せたのは、僕らの生まれはたったの5分違いで、そんなの大した問題じゃないってことだけだった。

<コメント> なかなかうまく訳せていますね。「泣きついたこともある」でもいいかな。「それでも」だったら「ようやく」の方が落ち着くと思います。
<余談> 殺人ウサギは強いですw。楽しんできてくださいね。

10.
たいていの一卵性双生児たちは、どちらが先に生まれたか知っている。じつは私たちも子どものころ、何とかそれを突き止めようと躍起になっていたのだが、両親はどうしても教えてくれなかった。思いつくかぎりの方法で尋ねたし、お願いだから教えてと懇願してみたこともあった。でも、やっと聞き出すことができたのは、ふたりが生まれた時間のちがいはたった五分だけで、そんなことは本当に大した問題ではない、ということだけだった。

<コメント>「懇願」は少しこのスタイルだと浮いているかな、ちょっともったいないです。それ以外はよく訳せていると思います。

11.
ほとんどの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたかを知っている。実際わたしたちも、子供のころは、なんとかして真実を知ろうと躍起になっていた。けれど両親に突っぱねられてしまった。根掘り葉掘りたずね、話してくれるよう懇願もした。しかし、聞き出せたのは、二人の間にある時間の差はたった五分で、それはまったくたいした問題ではないということだけだった。

<コメント>意味自体はきちんと取れているんですが、やはり文章の流れが今ひとつ良くないんですね。「なっていたものだが、両親には」とか。原文の切れ目というのはやっぱり思考の切れ目なので。

12.
ほとんどの一卵性双生児はどちらが先に生まれたのかを知っている。実際私も子どものころはしつこいぐらいに確かめようとしたが、両親は教えてくれなかった。それでも思いつく限りの方法で問いただし、時には懇願までしたものだ。しかしやっとのことで聞き出したその時間差はたったの5分。無いにも等しいものだった。

<コメント>「私」ではなくて「私たち」なんですね。「懇願」はどうも浮いています。最後のところは並列がはっきり見えていない気がします。

13.
大抵の双子というのは、どちらが先に生まれたのかを自分自身知っている。私たちも同様に興味を持ち両親を問いただしたが、いっこうに教えてくれることはなかった。考えうる限りの全ての手段方法で聞き出しを試みた。しばし懇願もした。しかし、唯一知ることができたのは生まれる時間がほんの5分違ったということだ。そもそもがさしたる問題ではなかったのだ。

<コメント> identical twinsだから一卵性双生児。(一卵性双生児だからこだわるんですね。)これも意味は取れているんですが、文章がぎくしゃくしています。最後の部分は並列だからそこはきちんと。

14.
一卵性双生児であれば、たいてい自分たちの生まれた順番を知っている。ご多分に漏れず、小さい時には何度となく聞き出そうとしたが、両親は教えてくれなかった。思いつく限りのあらゆる手を使って聞いた。土下座だってした。それでも、生まれてきたのは5分しか違わないと知るのがやっとだった。ちっとも気にすることじゃないってことも。

<コメント>「土下座」は英語圏にはない習慣なので使わない方がいいですね。「河童の川流れ」とかも一緒。後半はなかなか良い感じです。

15.
たいていの一卵性双生児は、どちらが先に生まれたか知っている。実は僕たちは、子供の立場から明らかにしようとしつこく試みたが、両親にはねつけられた。思いつく限りあの手この手で訊(き)き、頼むから教えてくれと泣きつくことまでした。それでも訊きだせたのは、僕たちが生まれたのはたったの五分差で、そんなもの全く問題にならないということだけだった。

<コメント>「子供の立場から明らかにする」はよく分からないです。他の部分は悪くないですが、「訊く」が繰り返しになっているのはちょっと残念。
<余談> 広島や大阪で見た紅葉も鮮やかでした。そういえばできたての紅葉まんじゅうもうまかった。

16.
ほとんどの一卵性双生児が、どちらが先に生まれたのかを知っている。実際に私たちも、子供のころ、知ろうと執拗に試みた。だが、両親は拒んだ。考えられるあらゆる方法で尋ねてみたし、どうか教えてくださいと頼み込むことさえした。それでも、私たちが聞き出せた唯一の情報は、生まれたのはたった5分差だということ、そして、それは本当にどうでもいいことだ、ということだけだった。

<コメント>執拗に~拒んだの部分は文章を切ってしまうと流れが悪くなるんですよ。意味自体はきちんと取れているのでもっと自然に訳すように心がけてくださいね。
<余談> お帰りなさい。

17.
一卵性双生児というのは、たいていの場合どちらが先に生まれたかわかっているものだけど、実を言うと子どものころ、僕たちはそのことを探り出そうとやっきになっていた。でも両親は答えてくれなかった。考えつくかぎりの手段をつくして質問攻めにした。本当のことを言ってくれるように説きつけさえした。だけど聞き出せたのは、僕たちが生まれたのはたった五分違いだということ、そしてそれはまったく重要でないということだけだった。

<コメント>一行目は流れが良くないですね。「実を言うと」ではなくて、「実際」の方が自然でしょう。やっきになっていた~くれなかったの部分はやっぱり切らない方がいい。「説きつけ」はちょっと浮いているかな。

18.
大抵の一卵性双生児は、どちらが先に生まれたのか認識しているものだ。実際、私たちも子供の頃は必死になって知ろうとしたが、両親は頑として明かさなかった。思いつく限りあらゆる手を使って尋ねたし、それどころか縋り付いてねだったこともある。けれども、知りえたことといえば、生まれた時間が僅か5分違うくらい些末な事というだけだった。

<コメント>「ねだる」はちょっと違うかなあ。やや難しい漢字が多いかも知れません。流れ自体は悪くないのでちょっともったいないかな。
<余談> 「本で読んだんだけれども」といいながら~を教えてくれた」んですね。仮定法は英語の肝の一つですからしっかりマスターしましょう。がんばってね。

19.
たいていの一卵性双生児はどちらが先に産まれたかを知っている。実際我々も子供のころ、躍起になって知ろうとしたが、両親に拒まれた。思いつくありとあらゆる方法で尋ねたし、教えてくれとすがったことすらある。しかし、聞き出せたことはたったひとつ、2人の産まれた時間差はわずか5分だったということだけだ。それならば確かにさほど違いはない。

<コメント>流れはいいんですが、thatの並列の部分はきちんと訳したかったですね。

20.
ほとんどの一卵性双生児は、どちらが先に生まれてきたのかを知っている。実際に子供の頃、私たち双子はそれを聞き出そうとしつこく両親にたずねたが、両親は答えようとしなかった。思いつく限りの質問をぶつけ、ときには話してほしいと頼み込むこともあった。けれど、そうして聞き出すことができた唯一のことといえば、わずか五分の差で私たちが誕生したということで、それは大したことではなかった。

<コメント>「それを」は避けたいかな。「頼み込む」は子供だと考えると少し浮くかな。最後の並列は注意してください。
<余談> 今年はこれでおしまいです。続けることが進歩への道です。いつもおつきあいありがとうございます。

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