第78回 経済本&北欧ミステリをオススメ

一行翻訳コンテスト2014.01.16

■オススメの一冊

『Enough Is Enough』
(Rob Dietz、Dan O’Neil)

Enough Is Enough

そこで今月ご紹介する本の話になります。Rob DietzとDan O’Neilの「Enough Is Enough」は、上の「足ることを知る」の英訳です。冒頭に『A person who knows that enough is enough will always have enough.』が引用されており、これまでの経済に対するアプローチを改め、「限られた資源の世界で持続可能な経済を構築する」ことを提唱しています。このコンセプト自体は決して真新しものではなく、例えばLester Thurowが「Zero Sum Society」で書いたアイデアなどはこれに近いように思えます。もちろん、当時は持続可能性のような概念はなかったわけですが。これから考えて行かなければならないのは、(諸説ありますが)地球温暖化や地殻変動の活発化などの環境下において、より効率的であると同時に人間らしい社会を創り上げていくことではないかと考えています。日本の場合は地方分権、それも都道府県ではなく、以前の藩くらいの規模にして、その中でそれこそ電力から福祉まで含めてやっていくことではないかなと思っています。既に足ることを知ることについては、今年の成人式のインタビューを見ていても、若い人は理解している気がするんですね。ただ今の政治や経済を牛耳っているのは高度成長やバブルを経験した人たちですから、いまだに夢から覚めていない気がするのです。文章はこういう感じ。

Determining how big the economy can grow with respect to the biosphere is a problem of scale, and scale is a concept that confounds many people. I met one such confounded person during a bike trip along the Chesapeake and Ohio Canal. The C&O Canal cuts a narrow path for 185 miles through the leafy, rock-strewn countryside of Maryland. After its completion in 1850, barges loaded with coal, timber, and food floated down the canal from the hills of Maryland into the heart of Washington, D.C. For seventy-four years, mules walked the towpath, pulling the barges, until competition from railroads and relentless poundings from floods put the canal out of business.

■オススメの一冊-2

『Game』
(Anders de la Motte)

Game

今月の2冊目は、Anders de la Motteの「Game」。これはThe Game 3部作の1冊目です。名前から分かるように、著者はスウェーデン人。スティーグ・ラーソンのミレニアム・シリーズが大ヒットし、映画化されたこともあって、北欧のミステリー、特にスウェーデンのそれはアメリカや日本でもいろいろ翻訳されるようになりました。この作品は、主人公のHPがゲームマスターによって与えられるアサインメントを達成していくというゲームに参加するという話で、そのアサインメントの内容は次第に過激なものとなっていきます。似たような内容の映画もあったとは思いますが、主人公がなかなか壊れていて面白いです。3部作の1つ目しか目を通していないので、最終的にどういう結末が待っているのかはまだ不明。(って続きはいつ読めるんだ?) そこで先日翻訳者の集まりで聞いた話を。上に書いたように、スウェーデンの推理小説がどんどん英語に訳されているんですが、実は翻訳にあたって、かなり意訳されたり、ばっさりと切られたりしているのだそうです。また英語とスウェーデン語の相性はとても悪いのだとも。しかしながら、スウェーデン語の翻訳者は決して多くはないので、どうしても重訳しなければならない場合、英語からではなく、ドイツ語から訳して欲しいという要求がくるそうです。以前、超訳というのが話題になりましたが、英語への翻訳の場合、むしろ「翻案」みたいな部分もあるのかも知れません。スタイルは次のような感じ。

The text flashed up on the screen for the umpteenth time, and for the umpteenth time HP clicked it away in irritation. No, he didn’t want to play any bloody game; all he wanted to do was figure out how the cell phone in his hand worked, and whether it was possible to do anything as simple as make a phone call with it?

The commuter train from Marsta, early July, heading toward the city.

Almost thirty degrees, his top sticking to his back, his mouth already dry. Predictably, he was out of cigarettes, and the only consolation was the breeze generated by the speed of the train, forcing its way through the pathetic little ventiltation window above his head.

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