第95回 翻訳は言葉の意味や定義を明らかにしていくもの

一行翻訳コンテスト2015.06.16

■オススメの一冊 その1

『When to Rob a Bank: …And 131 More Warped Suggestions and Well-Intended Rants』
(Steven D. Levitt & Stephen J. Dubner 著/William Morrow)

When to Rob a Bank: …And 131 More Warped Suggestions and Well-Intended Rants

では、今月の一冊目。Steven D. Levitt & Stephen J. Dubnerの『When to Rob a Bank: …And 131 More Warped Suggestions and Well-Intended Rants』。著者は『Freakonomics』『ヤバい経済学』)でおなじみの人たちですが、同書のヒットをきっかけに、ブログを開設し、そのブログで語られたことを本にまとめたものです。ベストセラーとなった『Freakonomics』『SuperFreakonomics』『超ヤバい経済学』)、『Think Like a Freak』『0ベース思考:どんな難問もシンプルに解決できる』)といった著書と同様に、その内容は刺激的な問いかけに満ちています。なにしろブログの第1回目のお題が、「If You Were a Terrorist, How Would You Attack?」ですから。当時はニューヨークタイムズのウェブサイトに設けられたというのもあり、このブログには多くの反論が寄せられます。本のタイトル「When to Rob a Bank」もそうですが、良く考えるとこういったテーマというのは決して絵空事でもなければ、単なるアジテーションでもない。格言に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というのがありますが、経済を考える上で、たとえば顧客の立場や機関投資家、あるいは財務当局の立場になって考えるというのは当たり前のように行われているわけで、現在の国会の議論、特に政府の議論で圧倒的に欠けているのは、では仮想敵国はどう考えるか、どういう行動を取るのかということです。具体的な命題として「イランは本当にホルムズ海峡を封鎖するだろうか」、あるいは「中国は本当に日本に核攻撃をするだろうか」といったものがあります。外交、戦略、戦術というのはこういうシミュレーションや可能性の検討の積み重ねに基づくものだと僕は思うんですが。文章はこんな感じ。

Aaron Zelinsky, a student at Yale Law School, proposed an interesting three-prong anti-steroid strategy for Major League Baseball:

1. An independent laboratory stores urine and blood samples for all players, and tests these blood samples ten years, twenty years, and thirty years later using the most up-to-date technology available.
2. Player salaries are paid over a thirty-year interval.
3. A player’s remaining salary would be voided entirely if a drug test ever came back positive.
I’m not sure about points two and three, but there is no question that point one is essential to any serious attempt to combat the use of illegal performance enhancers. The state-of-the-art in performance enhancement is the best set of techniques that cannot be detected using current technology. So, by definition, the most sophisticated dopers will evade detection, unless they are unlucky or make a mistake.
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■オススメの一冊 その2

『The Kraken Project』
(Douglas Preston 著/ Pan Books)

The Kraken Project

今月の2冊目は、Douglas Prestonの『The Kraken Project』。ダグラス・プレストンはリンカーン・チャイルドとの共作で知られます。初期は映画化された『Relic』『レリック<上><下>』)や『Thunderhead』などの単発ものを書いていました。特に『Riptide』『海賊オッカムの至宝』)は傑作です。初期のSFスリラーでも、ミステリー仕立ての作風でしたが、最終的にFBI調査官ペンダーガストを主人公としたシリーズものに収束していきます。もともと共作のために二人がいろいろな調査を行い、その成果を作品に反映する一方で、それぞれ個人名義で調査内容を別の角度から活かしたような単発の作品を書いてきました。こちらはダグラスの最新作で、土星の月であるタイタンで、地球外生命体の可能性を探るための探査船を制御するべく開発された人工知能であるドロシーが暴走してインターネット空間に逃亡してしまうというお話です。こんな感じ。

It took four more hours to prepare the Explorer to be dropped into the liquid methane sea. By three o’clock in the afternoon, Melissa felt almost sick with tension, her empty stomach in a knot. The Explorer had been sealed inside the Bottle’s air lock. Technicians had evacuated the air in the lockdown to a vacuum, then cooled the Explorer down to 290 degrees below zero. When it had finally come to equilibrium at the lower temperature, they had slowly introduced the dense atmosphere of Titan into the air lock.

この作家の良いところはとにかくリーダビリティーが高いことで、さらさらと読める上に、とてもテンションが高い内容となっています。ジョン・サンドフォードとかプレストン&チャイルドとか、日本ではなかなかブレイクしませんが、ぜひ読んで頂きたいと思います。

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